フィンランド大使館後援のロシア映画でカンヌ、ということで鑑賞。
寝台列車の個室6号、コンパートメントNo.6で乗り合わせた、フィンランド学生のラウラとロシア鉱夫のリョーハの心の変遷を描く。
自分の芯を見出そうとしつつも人に求められたい欲求の強いラウラ。彼女に絡んでいくが中身は純粋なリョーハ。
嫌がられ続けても折れずに絡み、彼女の好みそうな、教養のある同性の女性や、温かな寝床や、美味しい料理など、一方的に愛情表現(愛されたいがための対価でもある)をしていく彼は、躾のなっていない猛犬から健気に尻尾を振りつづける芝犬と化していく。
絆され、やがて彼自身を求めようとする彼女に対し、彼は、急に現実味が増してビビってとりあえず逃げてしまう。
果たして二人の関係は、電車の終着とともに終わってしまうのか?
95年公開のビフォア・サンライズを観たのは高校生の頃だった気がするが、自分の人生にもこんな可能性が1%でもあるのではと感じた人には懐かしさがありそう。
相手がいなければ高級ホテルも伽藍堂で、満たされてさえいれば下等列車でも極寒の地でも楽しいという彼らの様子は、まさしくジャックとローズの再現だった(似顔絵もオマージュかな)。本人同士は相手の腹がわからずとも、観客には彼らの想いの変遷が手に取るようにわかる。
私は特に近年は恋愛映画を全然見ていない(漫画は読む)ので新鮮に映ったのもあったが、おそらくは舞台がロシアであったからいま評価されたところはあるだろう。
エルミタージュを始め、行ってみたいと思っていた国の一つであったロシア。おそらくその地を踏むのはもう難しいであろうが、本作でその旅路を見て、(これは30年前の設定ではあるが)極寒地域における寝台列車の旅は、なかなかキツイもんがあるなとは思った。と、ロシアでも同性性愛を隠すのはびっくりした。まあそれはあの教授の性格を表すための設定かも知れないが…
やはりあのモフモフ帽子は観光客向けなのかね。