Siegward

かもめ食堂のSiegwardのレビュー・感想・評価

かもめ食堂(2005年製作の映画)
3.9
まるで良質なエッセイを上手く映像化したかのような映画。

特に何も起こらない淡々とした日常が描かれるものの、切り口や着眼点の面白さがあり、クスっとなるようなユーモアや温かさが随所にある。

是枝作品の小林聡美が良かったので鑑賞したが、こちらも抜群にハマっている。“異国で特に計画性もなくいきなり飲食店を出店する”という主人公の突拍子のなさを「まあコイツならするかもな」と不思議な説得力で成立させるのは凄い。

明朗快活な主人公、朴訥として不器用だが心優しいミドリ、阿佐ヶ谷姉妹のような面白い間と喋り口調のマサコの3人を中心に展開するやり取りがとても魅力的で、物語の起伏は少ないものの、芝居の良さが関心を最後まで引っ張ってくれる。

ただ、その反面で映像的な良さにやや欠けるという問題点もあり、映画の割には役者の演技に頼り過ぎている印象。それほど予算が潤沢な作品でないだろうから仕方ないけど、ヘルシンキの街並みや景色の美しさがもっと表現されていれば、自分は評点4以上にしてた。

いずれにしても、こういうゆったりとした日常系の映画をご所望の人には是非おススメ。
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