トゥーン

牛首村のトゥーンのレビュー・感想・評価

牛首村(2022年製作の映画)
4.3
こういう感じがいいんだよ。久々に当たりJホラー。Jホラーの総決算か?
相変わらず、怖くない。そもそも、ホラーって怖いのか? 今回は、いや今回もパターン化されたホラー演出をしている。そのため、どこで怖がらせてくるかは分かる。怖がらせ方も予想の範疇。村シリーズ恒例の飛び降りと轢き跳ねは健在。CGも進化したもので、ワンカットで見せられるようになったものだ。『回路』で飛び降り自殺をワンカットで見せたことに驚いていたことが、今では当たり前になったのだ。時代は進んだ。それでも、ホラー演出は昔のまま。昔よりも劣化している。エレベーターに挟まれて死ぬ人がいるが、肉体が千切れるときに体がぴょんと浮くのは流石に笑う。それでも、Siriの誤作動など、時代に合わせた演出もしている。まぁ、ベテラン監督に褒めることではないけど。
ただ、分かりやすいホラー演出に目を向けると、残念の一言だが、映画自体の演出、すなわちカメラワークなどは上手い。ワンカットでなるべく見せて、緊張感の維持を図っている。Kōki,が一人二役やっているが、その二役を何度もワンカット内に登場させる。合成だろうが、カットを割らないことで、あたかも二人別々の人がいるように見せて、映画に没入させようとしている。
『犬鳴村』では設定を曖昧にし、ご都合主義が目立ち、『樹海村』では話をややこしくして、ファンタジー映画になってしまっていた。それを踏まえ、『牛首村』はシンプルなストーリーで、設定も矛盾点はありながらも、そこまで気にならないものになっていた。
本作では、コロナの影響もあり、実際の心霊スポットで撮られているし、ロケ地も少ない。その分、映像の見せ方がスッキリしているし、心霊スポットならではの緊張も感じられた。
今作が村シリーズの中で、一番村の風習をしっかりと描いており、残酷な過去を見せてくれた。

ここからネタバレ。
勝手な風習のせいで、穴蔵に落とされる。そして、穴蔵に落とされる他の子供を食らって、穴蔵の中で長いこと生きた奇子。それは貞子の生い立ちとそっくりである。井戸の中に落とされた。しかも、すぐには死なず、井戸の中で成長し、長い間生きていた。奇子の母音を見ると、aaoであの貞子や伽椰子と同じである。Jホラーがいまだ、『リング』と『呪怨』を代表作としていることに対する諦めか、それとも挑戦か。どちらにしろ、こうした胸が痛くなるような過去を待っていたのだ。
双子の設定も大事なポイントである。詩音が寄子に取り憑かれてしまう。奏音が自己犠牲で、寄子と共に崖から落ちる。冒頭で登場した「ひとりぼっちじゃ可哀そう」という言葉で。ここには、コロナ禍によって、一人時間が増えたことの反映もあるだろう。長いこと作られてきたJホラーだが、最後に行き着く最も呪いが生まれる悲しい原因は、『リング』から変わっていない。暗闇の孤独だ。この作品がコロナを通じて、ホラーの原点回帰を図った。Jホラーのあるべき姿。求められている姿。
ラストは色々と蛇足。崖から落ちて、終われば良かったのに。
村シリーズは本作で終わりのように思わえるが、原点回帰からの進歩を切に願う。25年の間で何も変わらないのは、あまりにも悲しい。東映×ブースタープロジェクトで、プロット募集もかけていたし、次は水が関係したホラーシリーズが展開されるのか!?
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