明石です

牛首村の明石ですのレビュー・感想・評価

牛首村(2022年製作の映画)
3.3
話を聞いた人間は全員死ぬと名高い伝説の怖い話「牛の首」が今もなお囁かれる村へ実地検証に行った心霊YouTuberが失踪してしまう!彼女が残した映像に、ガールフレンドと瓜二つの女性が映っていたことから、東京の男子校生が、恋人のドッペルゲンガーを追って、都市伝説発祥の地を訪ねることになる。

登場人物が覗き込んだ水たまりに女性の飛び降り自殺の残像が映る演出が本作の白眉かもしれない。しかも二度。純粋な演出の技術で魅せるの良いよなあ。わかってても怖いシーンがしれっと二度繰り返されることで、効果音がなくともちゃんと怖いという。そういえばこの映画、ラストに至るまで余計な効果音は一切なかった気がする。古今東西、ホラー映画は、ジャンプスケアに手をつけることから陳腐になり、逆に、ジャンプスケアをやめるところから工夫が始まると思っているので、この映画はまずその点は好き寄りでした。

とはいえ、それくらいしか良いところが見当たらず、、ジャンプスケアがないのは、あくまで「良いホラー映画」になる可能性があるということで、それだけで「良い映画」になるわけでは当然ない。三部作の最終作なので、前二作より多少はましになってるかと思いきや、むしろ酷くなってる。終盤の畳み掛けるような「恐怖シーン」にはもはやリアリティの切れ端さえなく、あの手この手で「恐怖シーン」を押し付けられるごとにこちらの熱量は下がっていく。三部作でいちばん評価が高い(全部低いけど相対的にはマシな方)みたいですが、個人的には、この三作目が一番パッとしなかった。「犬鳴峠」や「コトリバコ」など、理解されやすいテーマが最初から用意されていた前二作に対し、ほぼオリジナルの本作では、作り手の想像力の貧弱さがまるまる露呈してしまった感じですね。

誰なのか知らないけど、この映画の作り手は、ホラー映画を作る前に、人が何を怖がるのかあるいは何を見ると冷めるのか、「恐怖」を題材にした映画以外の作品に地道に触れて学んだ方がいいと思う。三部作全てがホラーファンから顰蹙を買っているのに、なぜこの人は、干されもせずにのうのうと映画作りを続けているのか。兎にも角にも、日本のホラー界は駄作に甘すぎると思う。三部作すべてのレビューに似たようなことを書いた覚えがあるのだけど、三部作すべてに似たような感想を抱かせる作り手もなかなかにしつこい。

リアリティ度外視が面白い方に作用してる点もあって、たとえば心霊YouTuberの存在笑。『犬鳴村』で廃村の村人に魅入られて自殺し、『樹海村』では樹海へ入り行方不明になった心霊探索YouTuberアッキーナが、前作と前々作での死をもろともせず、凄まじいバイタリティで今作にも続投。もちろん目的は死ぬこと。まあプルーストも『失われた時を求めて』の中で、一度亡くなった登場人物を100ページくらい後で普通に生き返らせたりしているわけで、プルーストにできるならアッキーナにできないはずはない!!
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