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リバー・ランズ・スルー・イットのりのレビュー・感想・評価

4.3
【感想】
マクリーン家の約80年間にわたる物語を見せられた。決して、アグレッシブなものではなく、むしろ悠々と時が進んでいく。80年と聞くと長いようであるが、マクリーン家の起源から数えると大したことはない。また、本作では描かれていないが、ノーマンの息子やその孫、そして曾孫と命のバトンが渡されていく。つまり、本作が描いたのは、時の流れのほんの一部分に過ぎない。
本作を鑑賞して思ったのは、生の系譜についてである。過去から現在、そして未来へと流れる時の流れ。そこに、僕らの生を位置づけて見ると、全体の一部でしかないことに気づく。たかが100年足らずの人生。しかし、そこには葛藤や挫折、享楽や幸福など、様々な感情が織り込まれている。そして、自身が感じたことを、教訓として、あるいは思い出として息子に語る。それが、知らぬ間に、息子の思考に影響を与え、その曾孫へと語り継ぐ。このように、親から子へと思考は連鎖していく。したがって、僕らのパーソナリティは多分に歴史的なものである。つまり、趣味や感受性、価値観や思考様式は親からの「遺産相続物」なのだ。そして、それらを次世代へと階層的に分与する、あるいは水平的に、つまり友人や恋人に語ることで自分自身を刻み込むことが必要とされる。なぜなら、それらは先人たちの生きた証だから。それを保持していくことが、最大の祖先孝行に違いない。


【要約】
マクリーン家の1世紀にわたる風景を見せられた。幼年期から壮年期まで、まさに「ゆりかごから墓場まで」を描写している。幼年期:ノーマンは弟のポールと共に、仲良く、時に喧嘩や悪戯をして過ごしてきた。共に、父の趣味であった鱒釣りに興じ、将来の夢を語り合う。
青年期:ノーマンは大学に進学し、ポールは地元の新聞社に就職する。堅実な兄は教授になる道に進み、破天荒な弟は差別が根強い中、先住民と交際したり、ギャンブルで借金を抱え込む。また、ノーマンはジェシーと知り合ってから、交際に至るまでが映し出されている。しかし、物語の終盤、ポールが殺される、という事件が発生する。だが、淡々と物語は進み、壮年期の描写へ。
壮年期:ノーマンはただ一人、川に入り鱒釣りを続けている。川に入ることで、兄や父との思い出を噛み締めているのだろう。
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