Jeffrey

恐るべき子供たち 4Kレストア版のJeffreyのレビュー・感想・評価

3.5
「恐るべき子供たち」

本作はジャン=ピエール・メルヴィルがコクトー自身がナレーションを務めるかたちで、1950年に監督した傑作で、この度国内で初BD化され購入して久々に鑑賞した。この作品はコクトーがそれまで映画化の申し込みを全て断っていたもので、メルビルの申し込みが受け入れられたのは、彼の義勇兵風なスタイルが、自分の考えていた16ミリの即興活かす映画作りの息吹きを実現してくれるだろうと考えたからと語っていた。資本不足も、スターの存在も、生の装置で撮影することを強要したらしい。撮影は監督の借り家で行われ、その家では当時メルビルの病妻が伏せってしまったが、この映画を撮れるかもしれないとの希望から彼が借りてあったものだったそうだ。


さて、物語はある雪の日の夕方、中学生たちの雪合戦が熱を帯びる中、ポールは密かに思いを寄せていた級友の美少年ダルジュロスの放った雪玉を胸に受け倒れてしまう。怪我を負ったポールは自宅で療養することになるが、そこは姉エリザベッドとの秘密の子供部屋、他者の介入を許さない、死を孕んだ戯れと愛の世界だった…と簡単に説明するとこんな感じで、ヌーヴェル・ヴァーグ誕生前夜のジャン・コクトーとジャン=ピエール・メルビルの70年の月日を経て、今蘇る驚異の4Kレストア映像が体験できる素晴らしい作品になっている。フランスの名監督フランソワ・トリュフォーをして、「コクトー最高の小説が、メルビル最高の映画となった」と言わしめた、映画史に輝く傑作が、フランス劇場公開70周年を記念して、最先端技術映像で現代に蘇る感動を味わえる。

1940年から50年代のカルチャー鮮華やかなりし頃のパリで、一躍時代の異端児となっていたジャン・コクトー。絵画に文学、詩わ演劇、そして映画に、その才能が止まることがなかったそうだ。そのコクトーが自他ともに認める最高傑作と明言し、拒み続けてきた「恐るべき子供たち怒」の映画化を唯一許したのが、当時、映画デビュー作「海の沈黙」が注目を浴びていた新人ジャン=ピエール・メルビルだったそうだ。ヌーヴェル・ヴァーグ誕生の胎動を感じる撮影スタイルには、メルビル同様「海の沈黙」で撮影監督デビューを果たしたアンリ・ドカエがチームに変わったことも大きいとされ、スタジオ方式の撮影を嫌い、演劇的なアプローチと即興演出にこだわった本作の登場は、直後の映画史に大きなうねりと痕跡を残すこととなったとされている。印象的なシーンはザリガニを食べるときの姉弟喧嘩だろう。そこは笑ってしまう。
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