morihaya

アリスとテレスのまぼろし工場のmorihayaのレビュー・感想・評価

4.1
これはすごい物を観たな...
おそらく評価は明確に分かれる奇作で、少なくとも娯楽映画ではないです。

ラストシーンでの解放や登場人物達の決意や選択からのカタルシスは少なく、最高クラスの映像美でラストは終わりますが、観終わったこちらの感情はごちゃごちゃです。

中学生の主人公達の、行為だけならソフトなのに性的なシーンが艶めかしく扇情的で、過ぎ去った思春期の情動を抉り出すような印象を受けました。その感情が残ったままラストに行くのでカーチェイスの疾走感や夏祭りの景色の美しさがなかなか入って来ない...引きずりすぎてしまうのは人によるのでしょうが。

不思議な世界観に少しずつ説明がついていくことは謎解きの楽しさはありますが、根本的には謎の力に依るものなので納得感は少ないです。それでも神隠しの向こう側の世界にひとつ新しい在り方を提案したと思いますし、世界の境界であるひび割れは素晴らしい表現でした。

自分にとって良い作品のテーマとして、どのくらい心が動かされるかがあり、本作品は楽しさも爽快感も少ないですが、後々に残る複雑な感情の動きを貰えたので私は高評価です。素晴らしい映像作品でした。
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