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モガディシュ 脱出までの14日間のtakaeのレビュー・感想・評価

4.3
ソマリア内戦に巻き込まれた南北大使館員たちの、生死をかけた脱出劇。

いやこれほんっと面白かった!
何という緊迫感と臨場感...!こういうテーマをエンタメに昇華させる韓国映画の力は本当に凄い。その力をまざまざと見せつけられて圧倒されました。

韓国と北朝鮮、それぞれのアフリカとの関係性や外交の狙い、それに伴う情報操作や妨害工作などの足の引っ張り合い。
前半は国際政治に疎い私でも理解できるような説明があり、混乱せず作品の世界にすっと入っていくことができました。

政府に不満を持つ反乱軍が暴動を起こしてから内戦状態に入るまでのスピードがあまりに早く、見ていて呆然としてしまった...
中でも一番恐ろしかったのが、まだ年端もいかない少年たちが笑いながら銃を持ち、略奪や殺戮に加わっていたこと。この光景には心が凍りつきました。

自国との連絡も途絶え、国外脱出の手段を失った韓国と北朝鮮の大使館員。決して相容れることのできない彼らがこの危機から脱出するために手を組めるのか...まさに「国か、命か」の選択。

『JSA』『工作』などなど南北問題を扱った作品は他にもたくさんあると思いますが、いつも思うことはひとつ。
対個人であれば心を通わせることができるのに、国同士になるとそれが高い高い壁となり、決して交わることができない。個人の力ではどうにもならないけど、それはすごく悲しいことだと思います。

緊迫した状況ながら、笑いも入れつつ南北大使館員それぞれの葛藤、微妙な距離感などが描かれる前半から怒涛の後半へ。

後半の銃撃戦とカーチェイスの迫力たるや!
このカーチェイスの緊迫感は過去一だと思います。とにかく手を握りしめて祈るしかなかった。
これ一体どうやって撮ってるの?!というようなカメラワーク、まるでマッドマックスのような疾走感。いや~痺れた!一瞬たりとも目が離せない映像と展開は本当に圧巻でした。

さらに、キャストも本当に素晴らしかった。前半と後半でキャラクターの印象がガラッと変わるのも上手い。
主演のキム・ユンソク、ホ・ジュノ は勿論のこと、個人的にはチョ・インソン とク・ギョファン に完全にやられました。あんたたちのその色気なんなのよ!けしからん!特に、ドラマD.P.でおなじみのク・ギョファン最高かよ...泣
チョ・インソンはお初でしたが、彼が前半と後半で一番印象が変わったキャラクターでした。

「工作」を彷彿とさせるラストが胸に刺さって最後は涙、涙...これは本当に大傑作!劇場で観ることができて本当に良かったと思える作品でした。

この映画、制作費25億円、モロッコでのオールロケとのこと。
日本映画とはスケールが違う...資金も潤沢で役者さんも恐らくこの作品だけに集中出来る環境に置かれているんだろうなぁ。 日本は同時に違う作品を撮ったりしてるもんね。役者さんの労働環境がもう少し整備されていくといいな。
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