【物語は何も語らず…😔】
スピルバーグの『シンドラーのリスト』が如何にも勧善懲悪的なハリウッド映画らしいスタンスなのに対して、本作はあくまで実録調。ポランスキー監督の実体験に基づいて描かれた「戦争という名の地獄絵図」。
原作小説は未読だが、じわじわ恐怖感を煽る演出が『ローズマリーの赤ちゃん』や『反撥』などと同じく心理的に怖い。下半身付随の老人を屋上から突き落とすシーンがショッキング。また主演のエイドリアン・ブロディの痩せこけた容姿から漂う悲壮感はハンパではない。
ロマン・ポランスキー監督のことをロリコンだとかサイコパスだとか批判するのは簡単だが、彼は非常に辛い過去を背負って生きる人なのでそんな人生観が浮き彫りにされた「私映画」なんだと思う。個人的には。抑揚のない淡々としたタッチはある意味、スピルバーグには無理な表現と言える。
平和が戦争を生み、戦争が平和を作る、という歴史の反復が痛々しくも胸に来る。敢えて声高に「反戦」を訴えない姿勢に共感した。