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エングラム 記憶痕跡のROYのレビュー・感想・評価

エングラム 記憶痕跡(1987年製作の映画)
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ポラロイド写真で撮影された風景が現実の空間からズレはじめ、松本が記憶についての話を繰り返し、坂を上る学生が一人ずつ減ってゆく。これまで追求してきた関係性のズレや虚実の対比というテーマを物語的に展開した。

ポラロイド写真、あるいはモニターのフレームによって区切られる、「虚構と現実」あるいは「記憶と現在」。それらの空間を解体・再構成することによって、揺らめく虚実の境界を描出する。 松本俊夫の作品としては珍しく、作中に本人が登場し、その声もコラージュされている。

「一体夢だったのか、それとも前にあったことだったのか。それはどうもはっきり思い出せないんですけどね。なんか最近記憶がとっても悪くなっちゃって。しかし、イメージだけは、はっきりと思い浮かべることができるわけです。もっとも、それが実際に、それを見たものかどうかが、はっきり分からないんだけれども」

音楽は稲垣貴士さんによるもの。彼は、1981年より、松本俊夫、伊藤高志らの映像作品のサウンドを手掛ける一方で、自らも映像作品を制作した。

「映像ってのも一種の記憶だと思うんです。その映像をもう一度撮影した映像ってのは記憶の<聞き取り不能>になるわけで、そこでは時間の痕跡が空間の関係としてあられるわけだけれども。記憶と記憶がお互いに響き合って、逆に新しい文脈が生まれてくるわけですね」
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