シュンチャカ

The Son/息子のシュンチャカのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.3
いくら仕事で成功していても、
自らが眠ってしまいそうになりながらも
子供を寝かしつける母親の代わりに
家事をすることは決してせず、
問題には蓋をして取り繕う彼は
自身を父親と自覚する資格すらない。
まして妻子ある身で恋をし子供をもうけるなど
見ていてあまりに非情。
スクリーンにはめっちゃいいスーツを着た
紳士的なヒュー・ジャックマンのはずなのに、
セル画を重ねたように自分の父親が映る。
しかし彼もまたダッドイシューを抱えた被害者でもある。
アンソニーホプキンスの毒親インパクトが素晴らしい。
そんな毒親と全く同じ言葉を
自分の息子にかけてしまう負のループ。
いかに富があろうと親にその準備がなければ
なにが悪いか原因もわからず血縁は破綻することを
まざまざと見せつけられる。
LOVE IS NOT ENOUGH IN THIS SITUATION.
愛は時として都合のいい言い訳でしかなくなる。
急性鬱病の息子を救うことはできない。
そもそも鬱をどう”マシにするか”は本当に人による。
古来より「人には人の乳酸菌」と言うように、
薬や芸術などのトリートメントが
全ての人の助けとなるわけではない。
自分が2018年〜2020年まで足湯のように浸かった鬱から
身を揚げることができたのは
誰のおかげでもなく
ただものづくりができる環境を自分自身でつくったから。
ものづくりをする時間(言い換えてしまえば没頭する時間)
でしかケアできなかった。

“異物”が混入することで顕在化する家庭の歪さ。
父と息子が戯れ合う束の間の時間があるが、そんな瞬間でもホモソな空気感に見えてしまう。
そんな彼がラストに泣き崩れる姿は父の威厳や理想の男性像からは程遠いが、彼の人生をなぞり終えた私たちはすでに感情移入してしまっているので、「家父長制にどっぷり浸かって生きてきた父親がそのツケを払わされてる画」であることには決して気付かない。
シュンチャカ

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