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The Son/息子のodyssのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.5
【育たない子供だっている】

なかなか深刻な映画でした。
作中人物には基本的に悪意はないんですけど、それでも悲劇を防ぐことはできない。

私が作中いちばん感心したのは、後妻ベス(ヴァネッサ・カービー)です。
年の離れた夫との間に赤ん坊がいて、それだけでも大変なのに、夫が先妻との間にもうけた17歳の息子との同居を認めるのは、ずいぶんできた嫁さんですね。
いまどき、こんな女性、日本にだってそうそういませんよ。それに美人だし(笑)。

一方、ヒュー・ジャックマン演じる父親も、まあ17歳の息子はもう少し構わないで放っておいたらどうかと言いたくはなるけれど、少なくとも多忙の身でありながら、また先妻と後妻に挟まれて色々厄介な身でありながら(自業自得かも知れませんがね)、努力はしているのですから、悪くはありません。

むろん先妻ケイトだって悪くない。

だから、要するに息子の心理的な質が問題なので、こういうのって、放っておいて治ればよし、治らなかったら仕方がないんじゃないか。

たしかに、最後近くの医師との面談のシーンが非常に重みを持っています。
あそこで仮に違った選択をしていたらどうか・・・とは思う。

ただ、私は心理的な病気というのは、肉体的な病気と違って完全な治癒は難しいと考えている人間なんです。
日本でも、精神科から退院した患者があっという間に殺人事件を・・・なんて例は珍しくありませんからね。要するに、医者にだって分からないのだと思う。
ああいう場合、息子のことを思っていればいるほど、息子の意向を無視するのは難しいと感じました。

それに、最後のシーンにあるような可能性は、多分なかったと思います。
才能があれば、何よりまず、どんどん自分で書いているはず。絵だって音楽だってそうですけど、頭角を現す人間はとにかくその分野で(認められずとも)活動するもの。活動できない理由を言い訳で挙げる奴は最初からダメですね。

なんだか救いようのないレビューになりましたが、そういう映画ですからね・・・
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