カイト

流浪の月のカイトのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.1
大学生が女児を誘拐する事件が起こった。そして15年が経ち、当人達が再び出会ってしまったことで第三者からの非難、当事者の生活が音を立てて崩れていく様を印象的に描いた本作。

本作における主要人物のそれぞれの演技に圧倒された。
事件の被害少女を演じた広瀬すずの場面ごとの性格、雰囲気の変わりようは凄まじく、子供時代を演じた子役ともリンクしており、環境や人で真の自分を隠すことで自分を守る成長過程も想像できるほど繊細だった。
一見、無機質で人間味のない雰囲気の中に葛藤や脆さ、激しい絶望感を併せ持つ文を演じた松坂桃李は間違いなく本作の核となっていた。更紗と接する時の安心感に満ち溢れた大人である文、自分を蝕み、隠し続けた秘密を更紗に明かす子供に戻り、取り乱したシーンのギャップには目が離せなかった。
そして本作で最も強烈なインパクトを残した横浜流星の演技も圧巻だった。
更紗への愛が大きすぎるが自分に自信がなく、更紗を縛ることでしか自分を見てもらえない弱さ、脆さを十分に表現しており、その不安を拭うために振るう暴力でさえもどこか哀しさがあり、見ていて辛くなった。
本作では映画ということもあり、文と更紗に感情移入することができ、第三者の2人に対しての仕打ちや態度に疑問を抱くことができる。しかし、いざ現実で誘拐事件の犯人と被害者という情報だけを与えられたら劇中の第三者と同じ行動を取ってしまうのではという問題提起をされたと感じた。
物事を一面だけで判断する危うさに警鐘を鳴らす作品だと思う。
カイト

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