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流浪の月のGKのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.0
久々に、余白がしっかりとられていてズシンとくる映画を観た気がする。150分、終始気が休まるタイミングはない。

その重たさを作っている要素がいくつかある。

まず映像。『パラサイト』などを撮っているホン・ギョンピョが撮影監督をつとめており、光と影のある陰影の映像を撮っている。出演者の表情が明るかったとしても、どこか影のある様子を映しているというか、決して払拭されない負の感情が画面全体から感じられる。

次に脚本と尺。冒頭に「余白」と書いたが、言葉が発せられないその隙間から、色々と感じ取ることができる。そして「静の時間と動の時間」その繰り返しが作中で何度も繰り返されるので、永遠に映画が終わらないように感じられてくる。その過程で、それが更紗と文の「時間と生」の感触だとわかり、それもズシンとくる。

最後に、何よりも俳優陣。広瀬すずと松坂桃李が良い演技をしていた。
広瀬すず、20代中盤になり少し落ち着いた役回りがハマってきている。
松坂桃李、「空白」もそうだったが、静の演技がうまい。抱えている感情はありつつ、それを表には出さない。ただ、作品を通してみると、感じとられるものがある。


作品が扱っているテーマに関して言えることは、「誰にとっても生きやすい世の中を作ることって難しい。」ということだ。
19歳の文の行為(10歳の更紗と2ヶ月間一緒に暮らす)は、更紗が望んでいたことだとしても犯罪なのか?(世間的にそう言われている定義としての)加害者と被害者は一緒にいてはいけないのか?
彼らが断罪された行為を取り締まる法律や非難に救われた人はたくさんいるだろうし、これからもいるだろう。しかしその法律や非難によって、悪意がなかったとしても傷ついてしまう人、生きづらくなってしまう人もいる。100%、すべての人を救えるルールや社会通念などなく、最大公約数を採用していくしかないのだろう。そこから漏れてしまった人をどう許容していくのか、共存していくのか、それはルールでどうこうできるものではなく、一人ひとりが考えて目の前の人と接することしかできないのだと思う。
とても難しいことなのだけど、文や更紗のような人に出会ったときにどう接するのか?関係を作るのか?鑑賞者に問うてくる作品だった。
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