初速がえぐい。いつのまにか恋人同士になってる。なんだコイツら、と思いながら気づけば人生の切迫感が観てる側に伝染する。履歴書に「令和」と書くところを「平成」としてしまうくだりは社会性に振り回される個人の図として象徴めいていて印象深い。画面の暗さも不思議と心地いい。いっぽうで訪問者を階段から見下ろす双葉の顔のかげりにはちゃんとドキッとさせられる。散骨する場面になって彼女らの台詞がとつぜん演劇調になるのは、自然さをわざとらしく演出する作品にたいするカウンターみたいなものかも、というのは考えすぎか。映画が羊文学を使ってるのは把握済みだったけど、劇中、ぬるっと塩塚モエカが出てきてびっくりした。藤原季節も、川瀬陽太もそんな感じで作品のなかで呼吸してるのがいい。みんな映画のリアルを生きてる。
