エビ太郎

沈黙のパレードのエビ太郎のネタバレレビュー・内容・結末

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『容疑者X〜』が傑作すぎたんだな〜

原作未読の立場でこう言うのもあれですが、ものすごい楽しみにしてたのもあって、正直ちょっとガッカリしてしまいましたね…

その大きな理由は登場人物の見せ方と掘り下げ方で、そりゃ人数が多いから2時間の映画にするうえではしょうがないというのは分かりますけど、いくらなんでも事件の加害者であり被害者のムラジュンの人物造形が酷すぎません?!百歩譲ってなみきやの面々の(背景は無視して)感情は理解できますよ?オープニングの素晴らしいシークエンスで、被害者の女子高生がいかにみんなから愛されていたか、映像から伝わりましたもん。でもさ、最も重要な15年前の事件、まさはる先生も最後の鍵って言ってましたよね、にほっとんど触れずに後出しみたいな形で彼の同居人であり共犯者のバックボーンも持ち出して、さも大悪党みたいに見せるのは流石に無理がありますよ…説明不足以前に触れてないですよね?(僕の見落としですか?)ほんのちょっとの裁判シーンと遺族の顛末を回想で2回みせただけで、あとは完全黙秘を貫いたエピソードを聞かされただけで、冒頭で北村一輝がゲロ吐く理由が僕たち観客にわかりますかね???そりゃ罪状?罪名?から何をしたかを想像することはできますよ、できますけれど、あまりにも本筋に組み込まれなさすぎているせいで、一輝渾身のやつれ演技も人物背景の浅さから、ただただサムく感じちゃいましたよ!ほんとムラジュンの演技力頼みでしたね。というか、ほとんどこの映画は名優たちの演技力ゴリ押しムービーに感じました。なんか肝心のみせる所(俺がみたい!所も含め)をぜんぶサラッと流された気分です!悔しい…

あの、まだ言わせてください。沈黙のパレードです。最後まで沈黙していた(みせ方として)のは、椎名桔平でしたけれど、あのシーンはホントよかったですね、椎名桔平の息づかい!なのにですよ、その直後の内海薫の湯川への通話のナレーション風味ときたら…桔平のあの息づかいand横顔でパン!エンドロール!だったらお、なんか良い映画だったかも、と思えたもののホントあのナレーションベースだけは興醒めもいいとこですよ…いや、分かりますよ?その後なみきやの面々がどうなったかっていうのは気になるところです。(その時には僕はもうほとんどそれについて興味はなかったですが)ただ、やるにもみせ方ってものがあるでしょうが!!全部言葉で説明してくれちゃ映画を観ている意味がないんですよ!!!!最後はもう力なく笑っちゃいそうでした、わたし。あと話逸れますが、配役に椎名桔平の名前を見た時点で、絶対犯人じゃん!って思いましたよね。それくらい個性の強い素晴らしい役者さんです。

懐古厨野郎はクソですが、でもやっぱりその点、『容疑者X〜』は素晴らしかった…もう5回くらいは観てますが、何回見ても石神と湯川の宴会後の朝の別れのシーンは震えますね…うわぁこれだよ!コレコレ!最高!!ってなります。あれは堤真一の抑えた演技力が天才すぎたのもありますが、そういうシーンが正直『沈黙のパレード』には、ひとつもなかったのが残念です。同じ監督の演出なのになぁぁ。ただ、ここまでツラツラ述べてきましたが、根本的な原因は脚本にあるのでしょう。このボリュームのトピックスと人物たちをまとめるのにも一苦労ですよ。なので、「視点を変えれば」この映画はとてもみやすい映画です。

『容疑者X〜』はオープニングがアレ?テレビ版の延長かな?って感じからどんどん映画になっていったのに比べて、『沈黙〜』はオープニングがうお!絶対コレはいい映画!って感じからどんどん失速していっちゃいましたね。

そう言った意味で、『容疑者X〜』が100点満点中2億点だとすると、『沈黙〜』は、100点満点中100点です。無名のただの素人が色々嘆いてしまいましたが、こんな世の中で新作映画を企画し作り上げて公開してくれたことに感謝しかないです。あとは、リアルタイムでガリレオ映画を鑑賞できたことへの感謝。それと、僕の初恋の人と言っても過言ではない柴咲コウの変わらぬ美しさにも感謝です。ほんとありがとうございました
エビ太郎

エビ太郎