harunoma

沈黙のパレードのharunomaのレビュー・感想・評価

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
1.9
沈パレ。シリーズ最低の出来であり、ものすごく微妙。
完黙だけで不起訴という、そもそも訳が分からないテーマ。
しゃべらない村上淳、コミカルを封印した俳優、飯尾などがいい。確かに、9月のスペシャルドラマの方がいい。同じ村上でも虹郎は牧野に似ている。朝倉あきが姉役というのも感慨深い。

トロピカルな回想から始まるこの映画は、コマずれのフィルムのストップモーションが燃え盛るデジタルの映像という露悪的な選択のもとに、観る者をいきなりまごつかせる。
自分の本当の娘のように接する、とある商店街の地域共同体はいいとして、その沈黙のパレードは、サスペンスを駆動する装置よりも決定的な個人の情念、動機を匿名的に希薄にさせてしまうし、対峙し慄き狼狽え荒んでいく北村一輝をして、あまりにも杜撰な十字架を勝手に背負っている。ほぼ主役。だが誰もが当事者性が皆無。

10シーンも出ていないように見える福山を出すなら、北村一輝の完全スピンオフでよかった。
生き別れた自分の母親が事件のキーパーソンだった『祈りの幕が下りる時』と真逆の方向のストーリー。
配役は順当に見えながら(配役と序盤の台詞量から犯人はすぐに分かる)、どこぞの舞台のような安全策が見え、飯尾の発見以外これと言って見せ場もなく、小気味いいお正月2時間スペシャルドラマがいいところ。パレードの頑張りも無意味に見える、だってそこで何かが起こるんでしょタイトル通り。
容疑者Xの献身のドラマと35mmフィルムが偲ばれる。
傑作『マチネ』以後の西谷の休息とフジテレビの凋落をどう考えるべきか。このまま魂のなくなる前に。
harunoma

harunoma