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13デイズのりのレビュー・感想・評価

13デイズ(2000年製作の映画)
3.3
【感想】
一髪触発の状況の中で、ケネディが英断をしていく様に魅せられた。少しでも対応を間違えば、第三次世界大戦が勃発してしまう。緊迫した状況の下、焦燥感や不安感に押し潰されずに、戦争を回避する選択肢を選んだケネディは賞賛に値する。「空気の支配」に抗えず、開戦の選択肢を取った日本とは大違いである。アメリカは、決断に責任とリスクが裏付けされている。だから、無責任で中途半端なことはできないのである。
ところで、このような差異が生まれたのは、日本とアメリカの国民性の問題に帰してはならない。それは、「社会問題の個人化」に該当するような愚鈍な思考である。この単純化を退け、組織や意思決定のプロセスに求めるべきである。ケネディはExComm(国家安全保障会議執行委員会)を招集し、多様な専門家から意見を得るようにした。また、大統領が会議の席をあえて外す工夫もした。理由は、政治的な背景抜きに、本音を話させるためである。
このように、意思決定のプロセスを整備し、権力を大統領に一元化したからこそ、戦争を回避するような意思決定ができたのである。
本作を視聴して、歴史系の映画の良さを認識した。それは、活字では感じられない緊張感や焦燥感を追体験できることである。確かに、教科書や本で、つまり「活字」で歴史上の出来事を追体験することもできる。しかし、そこで体験できるものは、読者の想像上の心情である。言い換えれば、読者が勝手に登場人物に投射した心情であり、実際のそれとは大きく乖離していることが想定される。例えば、活字で「キューバ危機に際して、危機感と焦燥感が街を覆った」と書いてあったとして、読者は想像力を働かせて、その状況を想像する。しかし、彼が考える気持ちと、実際のそれとの間には距離があることがある。他方、映画では、心情がありありと表現されているため、鑑賞者が認知するそれとの乖離の振れ幅が小さく済む。そこに、映画のメリットがあるのである。

【要約】
2週間にわたる「キューバ危機」を描写した映画。1歩間違えば、米国が崩壊するという緊張の下、ケネディは決断を下していく。
り