カメラという道具を使うことで母ジェーン・バーキンと向き合い、対話を深めることを試みた、娘シャルロット・ゲンズブールの初監督作品。
一見、撮りためていたホームビデオ、二人の日常会話を編集しただけの作品かと思いきや、終盤に向けて母の生涯や人生観、過去の苦しみが明かされていき、対話の深まりから様々な思いが喚起されていく構成は見事で、16mmフィルムの映像も効いています。そして、老いた母親の皺やシミを執拗に写し取る娘から、母の生き様を残しておきたいという強い執念を感じ取りました。
たぶん若い頃にこの映画を観ていたら、「凡庸で退屈」と寝ていたでしょうが、前期高齢者の僕にとっては、とても面白い作品でした。