なっちゅ軍曹

ブレードランナー ファイナル・カットのなっちゅ軍曹のレビュー・感想・評価

3.8
15年ほど前に初めて見た時はさして面白さを感じなかった。この度、公開される続編が大好きな監督の作品なので、復習のために再見。15年前の僕はハリソン・フォード主演とあって、タフネスでハードボイルドな役柄を期待していたのだと思うけれど、今作のハリソンはめちゃめちゃ弱いしカッコ悪い。肉弾戦では全戦全敗で、女性を背後から撃つし、何か全てがカッコ悪い。なので15年前の僕は「ストーリーもよく分からんし、ハリソンカッコ悪いし、何考えてるか分からないし、暗いし、そんなに面白くない」という感想を抱いたのだと思う。で、今回再見して、前回よりは格段に楽しめました。まず前提として、本作の主役はハリソン演じるデッカードでは無く、ルドガー・ハウアー演じるロイなのだ。そして、これはデッカードの「前日譚」でもある。何故なら今作のデッカードはほぼ成長しない。普通の物語ならレイチェルとニャニャンした後にタイレル社に乗り込むとか、レプリカントと和解して反乱軍を結成するとか、熱い物語が始まるものだけれど、何事も無かったかのように、最後までレプリカント狩りを続ける。そんなデッカードが唯一感情的になったのが終盤。そしてラストカットの決意の籠った背中。ロイとの死闘(一方的にボコボコにされるだけだけど)を経て、デッカードが誕生した。主人公のバックグラウンドが本作完結を持って形成されたのだ。デッカードの本当の戦いはこれからだ! という終わり方。というのが本作だと思う。本作のデッカードはバックグラウンドが一切描かれないので感情移入が難しいし、先述の感想も個人の推測によるところが多いけど「いろいろな解釈が出来る」というところが本作がカルトたる由縁の一つでもある。それにロイの方が感情移入出来る。自分が4年と生きられないと知り、命からがら創造主の元へたどり着き、寿命が延ばせない事実を突きつけられる。それでも最後まで命を燃やし続け、最後にデッカードの心に強い影響を与えた。そんなロイの生き様に魅せられる。ロイのラストカットが強く印象的。カルトたる由縁が分かった気がした。