Jeffrey

自由を我等に 4K デジタル・リマスター版のJeffreyのレビュー・感想・評価

4.0
「自由を我等に」

本作はルネ・クレールの1931年のフランス映画で、この度紀伊国屋から国内初のBD化され美しい4Kの映像で見たが素晴らしい。フランス黄金期の30年代の映画はいいものばかりで、大量生産の時代に生きる窮屈さを皮肉った内容のこの作品は、ベネチア国際映画祭の作品賞に輝き、キネマ旬報ベスト一位に輝いた作品である。優しい笑いで人々を包み込み、映像と音楽の素晴らしいさを生み出した巨匠ルネ・クレール監督の永遠の名作は、チャップリン、小津安二郎など、世界の映画作家にも多大な影響を与えている。金持ちが支配し、機械化する社会への批判が込められた風刺激で、チャップリンの「モダン・タイムス」にも影響を与えた名作とされている。残念ながらベネチア映画祭で絶賛されるも、ファシスト政権下のイタリア、ナチスドイツ等で上映禁止となってしまってる。

おもちゃ箱のような工場の美術はユニークで、お金が空中に舞うラストシーンは圧巻。さて、物語は、刑務所仲間のルイとエミールは脱獄を企むも、ルイだけが成功。彼は露店のレコード売りから巨大な蓄音機会社の社長にまで出世する。一方、刑期を終えたエミールは、ルイの工場で働くジャンヌに一目惚れ。彼女を追って工場に入り込んだエミールは、ルイと再会。ルイは自分の過去を知るエミールが疎ましく、厄介払いしようとするが…簡単に説明するとこんな感じで、劇場公開後に消去された幻の2つのシーンを特典として収録されていたのも今回初鑑賞した。84分全てにおいて幸せを感じる傑作である。今思えばベネチア国際映画祭の第一回の映画祭の時に最も楽しい映画賞受賞と言う名目でこの作品が話題をかっさらったが、同じ31年度のアカデミー賞美術監督賞にもノミネートされていたことを思い出す。

30年代、あー30年代。素晴らしい多くの作品を生み出した30年代が恋しく思う。今の世の中Netflixを始めとする配信が主流になり、無個性な作品が多く大量生産されている時代と違って、一つ一つの作品に特徴があり強いメッセージ性があって本当に良かった時代だ。なんだろう、無味乾燥としてないのだよね、黄金期の芸術映画ってのは。この映画のすばらしいところは、脱獄シーンとオートメーション化された工場のラインは共に自由のない束縛された生活として描かれている点だ。映画はクレール・タッチの歌によって進行し、随所にスラップスティックの動きを取り込みながら、そこにほのかな恋を絡め、ブルジョアの面々に皮肉な眼差しを向けている。先月発売されたクレールの作品同様に、スタッフは継続されている。
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