Taul

最後の決闘裁判のTaulのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
『最後の決闘裁判』鑑賞。御大リドリー・スコットが当然かのような素晴らしい仕事ぶり。デイモンとアフレックとの共同で600年も前の話を羅生門のスタイル(でも実はミスリードとしても機能)を借りド直球に現代のテーマとして語り切る。その骨太で繊細な手腕を楽しむと同時に今もこの話が通じる社会である痛み。彼処で見てるのは自分であり、あの溜息を聞き取れているだろうか。

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リドリー・スコット。彼はエイリアンもアンドロイドもヤクザも英雄も弱者も女性も男性もそれこそ神さえも、平等に見てるように感じる。それはどんな者も出来事も容赦なく冷徹に描けるということだけでなく同時にそこにある情感(無常も含め)をしっかり浮かび上がらせることができるということだろう。

もう40年以上も時代を越え古びない傑作を生み続けているのもそんな視点とそこからくる演出スタイルが理由なんではないだろうか。『最後の決闘裁判』の凄まじさにリドリー・スコットについて改めてそんなことを考えてる。

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『空白』『由宇子の天秤』『最後の決闘裁判』が今同じ思考上に挙がっている。それは映画手法でキーとなる事象をしっかり見せることと想像させることのバランス。空白は1つは見せ1つは見せず、由宇子は視点を1つに限定して見せ、決闘は複数の視点でしっかり見せる。テーマや作家性とあってて面白い。

それともう一つはこういった映画の咀嚼の仕方で映画内での事実は何かを探ることに意味があるのか、そんなことより映画のメッセージとして、それを受け取る感性としてもっと大事なことがあるのではないかということ。生きていてちっぽけな視点しか持てない人間にとって重要なことのような気がしてる。
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