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最後の決闘裁判のmasayaのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.3
愛する者を巡る、友との宿命の対決。騎士道に則った決闘。第一章、二章で男二人から語られる物語はそうだ。第三章。事件の当事者マルグリットの語る物語は全く様相を異にしている。名誉も正しさも男社会の都合。彼女の目線を知ると、冒頭は華やかに見えた決闘シーンが完全に空虚に見える構成が見事。
百年戦争が続き、国内でも勢力争いに明け暮れる14世紀のフランス。当時の衣装やしきたり、パリや田舎町の庶民の暮らし、厳めしい城塞や激しい戦闘の再現に目を見張る。三人の登場人物それぞれに見えている物や感じ方が異なる「藪の中」形式で、同じ台詞や表情でも見せ方によって印象がまるで違ってくるのが面白かった。
一章は騎士の名誉をかけた決闘を描いた伝統的な英雄物語、二章は色男の道ならぬ愛情の顛末、三章は立ち上がった女性に吹きつける凄まじい逆風、という全く異なる切り口。どのような物語が人びとに受け入れられてきたかの歴史を一つの映画で辿るかのようでもあり。
同じ時間軸の出来事を三者それぞれの主張に沿って語るのだけど、第三章のマルグリットの時だけ最初に『真実』と注釈がつくんだよね。誰が真実を言ってるかわからない「藪の中」とは一線を画しているというか。語られてこなかった封建時代の女性の境遇にフォーカスしてる。
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