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最後の決闘裁判のyokoのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
5.0
羅生門、三者三様という言葉も浮かんでくるが、それだと角度によってそれぞれの真実みたいな話になってしまうのでそれはおそらく広告のミスリード。世相のムードを反映するなら妻の証言が一番客観的事実に近い。じゃないとわざわざ撮る意味ないからね。ただの羅生門なら今時弱い、だから羅生門のていの告発映画となる。だからといってマットもアダムも偽証というわけでなく、自分に都合の良い解釈しているのだが、そういう世界での考えかたをしているだけに近い。ただ男として騎士として、権力者として王に仕えるものとしての欺瞞があるかないかが妻のシンプルさとの違いだろう。

ラッセルクロウのIQを30くらい下げた役所のマットだが、要所要所流言を使って裁判まで流れを持ち込んだり、死んだふり作戦など、動物的な行動力に加えある種の机上では測れない強さドカタの親父的な強さを見せる。

アダムやキアヌは基本的に聖職者だと思っているので彼らのやりやりな役を観ると少し恥ずかしくなってくる。アダムの回想シーンでは誰もいないから悲鳴も聴こえませんよーってクールにジェスチャーもやるのだが妻のシーンだと無くなってるのは笑える。

序盤で存在感を見せてたピエールが後半はあまり出番がないのが残念。権力者サイコパターンはやはり好き。(そこまでやばいやつじゃないけど見た目)

グラデュエーターにおいてラッセルと皇帝はまあ最後ラッセルが〆るやろってくらい善玉感に差があったが、今回は史実を知らないのでまあどっちが勝つかわからない感は強かった。どちらのルートも胸糞確定というのが凄い。

妻は馬のシーンにも象徴されるように自由になりたかったのだが、自分の尊厳と天秤に掛けた結果、また夫に囲われる形となる。勝利後も幸せに見えないのは囲われが確定したからだ。決闘後のハグシーンは色々間違えたゴーンガール帰還シーンにも見えなくはないか。彼女の告発の勇気は素晴らしかったが夫のような謎の死の覚悟はなかったのが計算ミス。一番動揺していたのが夫が負ければ自分も焼かれると言われたシーン。マットは勝利後はより自分の力、やましいことがなければ神の加護を受けるという確信を強めるだろう。

観客目線だと場違い感の強い主人公気取りでガチャガチャ動いたマットデイモンが物語内目線で主人公に見えるところが面白いところなのだ。そういうのを揶揄しているはずなのだが、喝采を送る市民の目線は、旧友にはめられ、妻を暴漢された男が見事復讐劇に勝利!という筋書きになる。

子供がこれ見よがしに金髪感を出していたのはアダムの子ではないとも見える。そう考えると妻の自由になりたい故の偽証もワンチャンあるかも。

たまたま直近韓国映画のお嬢さんを見ていたのだが近い部分もあるかな
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