はぐみ

最後の決闘裁判のはぐみのネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

たった二文字の「真実」という文字がスクリーンに表示されたから、私たちはマルグリットを応援した。

それはつまり、監督から「これが真実だよ」と言われたから「真実だと思い込んだ」だけに過ぎない。

「真実」を部外者が聞いたり、考えたりしたことは、結局全て「真実とされているもの」でしかない。
証拠のない現場において、部外者が真実を探ること自体、虚しくて無意味なことだ。本人たちにしか分からない。

このやるせなさが最高。
もし仮に第二章と第三章の主人公が逆だったら、微妙に違う感情、感想を抱くことになる。とても危ういことだと思う。
「ル・グリは当時の価値観で自分は無実だと本気で思い込んでいたんだろうなぁ」みたいな感想を呟く人たちが現れていたかもしれない。(それでもきっとル・グリは批判されるだろうけど)
第一章に真実と表示されていたら、夫妻揃って応援しただろう。
たった二文字、「真実」とスクリーンに表示されるかされないかだけで、視聴者は誰の肩を持つかが変わってくるのだ。

もし仮に第三章が絶対的な「真実」であれば、第一、二章の存在意義が「人によって感じ方はそれぞれ」程度のものになってしまう。また、ありふれた「女性の権利を訴える作品」のひとつになってしまう。訴えたいテーマが「女性の権利」なら第一、二章は無しにして、もっともっとマルグリットに焦点を当て深い作品にすべきだ。

長すぎると言われるこの作品の第一、第二章が削られていない理由は明確にあると思う。第一、二章も真実になる可能性を秘めているのだ。
今回はたまたまマルグリット側が勝ったから「真実」という文字が表示されている。もしル・グリが勝てば後世においては第二章が真実となる。
監督が「今度は第二章に真実って書いてみるか」と気まぐれを起こせば、マルグリットを批判する人は増えるだろう。

真実なんてもんは「真実を言ってそうで声がでかくて運がある人が言ったこと」でしかない。本当に真実なのか、曲げられた真実なのか、第三者には分からない。
当たり前のことなのに、みんなマルグリットを擁護する。恐ろしい。

インターネット社会でも、真実だと思っていたことが真実ではないことがある。
真実を部外者以外が探ろうとすることの無意味さを描きつつ、女性の権利・尊厳を描いた素晴らしい作品だと思う。

決闘のシーンの映像も、背景・衣装なども素晴らしかった。

言われたことを鵜呑みにすることの愚かしさを身をもって味わった。そして改めて性暴力やセカンドレイプがいかに人の尊厳を奪う最低の行為かを学んだ。

とはいえ、アダムのルックスが最高〜〜!!!!!!

ひねくれた感想、失礼しました。
はぐみ

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