Toshi

最後の決闘裁判のToshiのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.2
2021年にリドリー・スコットの良作が見れることに感謝🙏

しかもマット・デイモンとベン・アフレックの共同脚本でアダム・ドライバーも出演しているだと!?絶対面白いやんって思ってました。

面白かったです。14世紀フランスの世界に住む生き生きとしたキャラクターの世界に引き込まれました。


ジョディ・カマー演じるマーガリットの強姦事件を巡り、夫演じるマット・デイモン、その友人で加害者となるアダム・ドライバー、そして被害者本人のそれぞれの視点から事件を眺めます。それも分かりやすく「Part1-誰々の真実」と宣言したパートが3つに別れています。
性被害を巡る男性側の都合の良い解釈(お前が誘ったんじゃないか?など)はまさに現代社会にも残る女性蔑視の問題の一つです。このような性差別をテーマとして取り上げる上で、時代設定が14世紀であることの+効果は大きい気がします。
14世紀だからこその明確な男性社会が舞台のため、現代が舞台の映画では出てこないような露骨な台詞が飛び交います。しかしここで描かれている問題は決して600年以上前のただの歴史上の出来事ではなく、まさに現代社会が抱える問題であることを観客は当然のように理解できます。

物語の主人公は映画の中で男性から女性へシフトしますが、アダム・ドライバーのパートではじめてジョディ・カマーの知性に触れ、彼女のパートに移った時に初めて観客は彼女の1人の人間としての生き生きとした表情や交友関係を目撃します。男性目線では全く無視されていた側面です。

さて、このような構造の中で彼女の訴えの真偽は「神の意思の下で」マット・デイモンとアダム・ドライバーの決闘に委ねられます。この決闘により罪の真偽だけでなくデイモンとカマーの命が掛けられているという差し迫った状態がアクションの面白さを生んでいます。当たり前ですが、なんのために闘ってるのかよく分からないアクションとは面白さの質が全然違って、時間をかけて闘いまでのバックグラウンドを用意した点がこの作品のエンタメ作品としての楽しさを向上させています。素直にハラハラドキドキしました。(追記:とはいえ、残酷な強姦シーンがある映画で最終的にハラハラドキドキアクションというエンタメに持っていくのはどうなのかと、マット・デイモンの人物を振り返りながら思うところもあります。結局のところこれを面白いと思ってしまえるのも私が男性だからという面もありますし、一概に称賛はできません)


テーマ性があるだけあってそこを深掘りしましたが、セットや衣装によってもたらせれてる中世世界のリアリティや俳優陣の演技は最高でした。特にベン・アフレックは一際際立ってた気がします。アフレックとドライバーのホモ・ソーシャルな関係性もいい感じでした。
建設途中のノートルダム寺院が象徴的に写されるパリのシーンや戦争での暴力描写も生々しくて好きです。

今後もリドリー・スコットに期待。
Toshi

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