ブラックユーモアホフマン

最後の決闘裁判のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
3.9
男たちよ、今すぐその重くて邪魔なだけの鎧を脱ぎ捨てよう。

感想をまとめるのが難しいので内容は置いておいてガワのことだけ書くことにする。

ファンタジーではない中世ヨーロッパの歴史劇を、そういえば自分はあまり観たことがなかった気がする。
なので比較対象もあまりないのだけど、個人的にはそんなにハマれない時代・舞台設定だったかなと思う。

そして三幕構成に関しては、やりたいことは明確に分かるのだけど分かりやすすぎるのがあまり好みには合わなかったかなというのが今のところの印象。
このくらい分かりやすくしないと分からない人も多いというのは(これだけ分かりやすくしても分からない人すらいるのだから)、理解できるのだけども。
好みで言えば、Chapter1とかいう章立てを逐一出したり、The Truth<真実>とかって強調したりするのは、意図はわかるけど露骨すぎる気がした。

主観/客観が重要なキーワードの映画であることは言うまでもないけど、その点で結構頭を抱えてしまった。というのは、この映画は一応、主観的事実と客観的事実を明確に分けて描いている(ことになっている)けど、じゃあそういうことを特に意識(さ)せずに作られている他の色んな映画は、主観なの?客観なの?シーンによって違うの?という。映画って、カメラって、誰の視点なの?そして誰の視点であることが”正しい”の?というか、世界を真に客観的に捉えることなど可能なの?といったことまで考えてしまった。

ジョディ・カマーの演技が特に素晴らしかった。同じ瞬間の表情などの微妙な演じ分けによってそれぞれのニュアンスの違いを観客に分からせる。
これっていくら脚本に細かく書いてあったとしても、監督が丹念に説明したとしても、結局最終的には役者の力量に頼らざるを得ないところで。

マット・デイモンは真面目に演技しててもなんかどうしても面白く見えちゃうんだよな笑 ジミー・キンメルがどうイジるかばかり考えて見てしまう。

そしてベン・アフレックはそれこそ #MeTooの流れの中で過去のセクハラが問題視されてここ数年は前より活動を抑えていたから、親友マット・デイモンと一緒にこの映画を作ったというのが、意味深というか。嫌な言い方をすると、イメージアップ戦略かな?と思いながら見てもいた。
しかし金髪クソ貴族役はハマってた!

内容について一点だけ触れるとしたら、彼女が彼を告発し真実のみを語る姿勢を貫いたことは、勇気ある行動には違いないけれども、それによって夫が庶民に噂を広げたり、裁判でオッサンたちが何があったか彼女本人に聞いたりといったことが起こり、もちろん劇中においてもそのように描かれていたと思うけど、これは明確にセカンドレイプなので、もし本作から「彼女のように勇気を持て」というメッセージを受け取ってしまう人がいるとしたら、それは違う。

自分が最も想起した映画は『宮本から君へ』。あれは本作でいうマット・デイモンを主人公にしたような話で、やはり上記のような二次加害の問題は常に付き纏う。

【一番好きなシーン】
・ジョディ・カマーがマット・デイモンに「あなたは偽善者だ」と言うシーン。心なしかマット・デイモンも「言われてみればその通りだ」と思っているように見える。
・マット・デイモンが「静かに!」って言ってめっちゃシラけるシーン。こういうヤツなんだよな。確かにリーダー向きではない。けど僕はコイツはなんか憎めない。