津軽系こけし

最後の決闘裁判の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.8
津軽系こけし版
こういうのでいいんだよ


🐎リドリースコット監督作
🐎中世フランスが舞台
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中世ヨーロッパのダークな作劇が好きな津軽系こけしブッ刺さりの一作。

ぶっちゃけ話とかどうでもいい!!お金持ってるちゃんとした映画人が、この中世ヨーロッパのセット、世界観、美術を最高の質で揃えてくれただけで、ダークファンタジー好きは感涙モノ。ゲームオブスローンズが好きな人なら絶対好きな愛憎スペクタクル。



ひとつの事件を3人の登場人物の視点から異なる語り口で描く、いわゆる”羅生門”作劇。個人的にこの手の視点転換モノは羅生門が起源ではないと思ってるので、この呼び方は不服なところがあるが。

まずテンポ感が好き。
映画の最初は、金のかかった中世モノらしいジャンの壮大な戦にはじまるが、突如カットが変わりやさぐれた兵士たちが薄暗い森で酒を盛っているシーンに移る、これだけでジャンな負け戦だったとわかる。

続いて話はジャックがジャンに地代の要求を求めるシーンに変わる。おそらくこの間にかなりの年月が流れているが会話のたった二、三言で、ジャックが出世したこと、ジャンが子供を持たない不遇な立場にあることがわかる。そして2人の関係を逆算すれば、彼がカタブツの仁義の男であるゆえに不条理なこの世界でピエロとしての役割を担うことも伝わる。(こういう伝統を重んじるあまり、策略できない男はゲースロで真っ先に死ぬ)

ここまでの説明省略が見事なこと、映画素人に配慮して、大袈裟にわかりやすく説明したりしない。「映画を見てる人であれば、これくらいの匂わせで掴めるだろう」という最低限度だけど絶妙な塩梅で情報が散りばめられている。蛇足もないものだからまーーーー見やすいこと、全部の映画これくらいのテンポ感でいいよほんと。



感想の多くに中世の女性蔑視をテーマにしてる…というものが散見されるが別にそんなことはないと思う。そんなことを言ったらこの手の中世ヨーロッパモノはぜーーーんぶ女性蔑視を描いているってことになる。
マリリンモンローがスカートめくられて「いや〜ん♡」ってなるあれみたいに、この時代を描く上でのディティールのひとつでしかないと思うし、そうとしか解釈したくない。それに重きを置くと、この重厚で最高!!な世界観がポリコレへの壮大な前振りみたいに見えてくるので、そんな虚しい話はキングスランディングにッポーーーイ!!!

むしろ私はジャックに共感してしまった。周りの機嫌取りや、出世に花を咲かせることに忙しい男。ジャンの亡き子供の名付け親となるはずだったことを今でも名誉として受け取り、仁義を胸に彼を支え続けている。ジャンが笑い物にされていようと、友情でもって彼の肩を持ち続けることは容易なことではない。
それだけの想いをジャンに抱いているが、それはそれとして自分の地位の方が大事だし奥さんは寝とる。この辺りがハリーポッターを守らなきゃいけないけど、嫌いな男の息子でもあるし嫌味は言うスネイプ先生みたいで人間的深みを感じてしまう。

そして最後はジャンに見向きもされず裸で吊るされる。なんて悲しい男だ…。でもベンアフレックは最後まであそこに残ってたあたり、彼は本当にジャックを友として慕ってたんだなって涙腺うるっときたよ。そしてそれ以上に奥さんが悲しい…、ラストカットの思わせぶりな表情、投げかけてますね。リドリースコットありがとう

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🐎まとめ🐎
ジャック編の冒頭。いくぞーー!!ってジャンに続いてた兵士たちが、実はジャックのお情けで動かしてあげてたのみて「あージャンってマジで人望ねぇな」って笑っちゃった。吹き替えもよきでした。
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