こっふん

最後の決闘裁判のこっふんのネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

2024年 138本目

・いやーとんでもない作品。鑑賞後もずっと考えてしまう。
・中世独特の重厚感のある雰囲気、戦場の迫力、血腥さが強烈に伝わる映像美。
・歴史物が苦手な自分でも、予備知識なしで楽しめた。歴史物というより、誇りをかけたドラマ作品という感じ。
・ベン・アフレック、いつもと雰囲気が全然違う。
・章毎にカルージュ、ル・グリ、マルグリット3人の視点で決闘までの過程を描く。2時間半も余裕で耐えられ、引き込まれる素晴らしい構成。じっくりと出来事、3人の感情を緻密に描く。同じシーンかと思うけど、それぞれ微妙に異なる。でもその小さな違いで大きく印象が変化する。各々が自分の都合のいいように事件を解釈していると感じた。
・思わず呼吸が荒くなる、誇りと誇りがぶつかり合う大迫力の決闘シーン。ラストで一気に盛り上がりを頂点に持っていく。この尋常じゃない緊張感も、しっかり丁寧に3人のストーリーを描くからこそだと思う。
・当時の女性の信じ難いような扱い。後継を産むことが義務であり、男の言いなりにされ、マルグリットも強姦を訴えたことが罪であるような言われよう。法廷で浴びせられる侮辱に近い質問の数々。口を閉ざして罪悪感、嫌悪感を背負って生きていくのが正解なんだろうか。でも姑が言うように、当時女性が生きていくには耐えるしかなかったのかもとも思う。本当に狂った時代。
・マルグリットはカルージュの誇りを守るための決闘に巻き込まれる。もう後には引けず、腹を括って自分の人生を決闘に賭けざるをえない。あまりにも不憫すぎる。誇りに命を賭けるという不器用で生きづらそうな考えはかっこいいけど、なんかあほらしくもあるなと思った。
・きりがないけど、どうしてもずっと考えてしまう。決闘の結果、カルージュが正義、ル・グリが悪という神判が下ったのは分かる。でもそれでいいのか、マルグリットが求めていたのは誇りなのか。事件の根本が全く解決していない気がしてならない。決着がついたとはいえ、大きなモヤモヤが残る。どんな結果になっても気持ち良く終わることはなかったと思う。
・本当に一筋縄ではいかない事件。カルージュはマルグリットに後継を産むことを強要し、妻として正当に扱わず、愛を与えなかった。ル・グリはマルグリットへの想いを抑えきれず、強姦に走る。妻として愛さなかったカルージュが悪いのか?襲ったル・グリが悪いのか?マルグリットが被害者であることは間違いないが、本当に白黒つけ難いと思う。そういう意味では、決闘しかなかったのかもしれない。
・マルグリットはル・グリに乱暴されるが、どこか微かに歓びを感じてしまったように見受けられるのは自分だけだろうか。一方的で歪んではいるが、カルージュからは受けることのなかった想いをぶつけられたことを考えれば、説明がいく気はする。でもマルグリットは愛されたいと願うようなキャラクターではなかったか?次観る時はもっとマルグリットに注目したい。
・決闘中、そしてその後のマルグリットの色々な感情が入り混じった、手放しに勝利を喜べないような複雑な表情。何を思っていたんだろうか。
・マルグリットは決闘によって、完全に潔白になれたのか?一度疑いの目を向けられ、不潔だと思われれば、簡単には払拭できないと思う。彼女はその後幸せに暮らせたんだろうか。
・自分でも驚くほど長いレビューになってしまった。傑作。
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