あんじょーら

カード・カウンターのあんじょーらのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
4.1
ポール・シュレイダー監督     トランスフォーマー     U-NEXT


2023年見逃し後追い作品 その7


2023年公開映画の40本目/今年93本目  36/100 を目指しています。


ただ、なんとなく、オスカー・アイザックが主演している、で観る事にしたのですが、監督がポール・シュレイダー監督なんで、まぁなんとなく惹かれるものがあるのは分かってましたけれど、言葉に簡単に出来ないのですが、観終わった後、いろいろ考えても上手く言葉にならないけれど、なんか凄いモノを観た感があるのは、前作「魂のゆくえ」でも感じたポール・シュレイダー監督脚本作品です。


前作「魂のゆくえ」も凄かったですけれど、脚本の好みも合いますし、主演をやる人のキャスティングも好みです。イーサン・ホークもオスカー・アイザックもタマラナイ魅力があると思います。そして内に秘めたる何か、を感じさせるのが上手い役者さんだな、と思いました。


ポーカーゲームの映像が流れる中、男(オスカー・アイザック)がモノローグで語り掛けてきます、自分がムショ暮らしに慣れるとは思わなかった、そこでカードを覚えた、と独白して・・・というのが冒頭です。


前作「魂のゆくえ」も、かなり解釈の開かれた作品で、観る人によっては、なにがなんだか??という部分もある、何と言いますか、スピリチュアルな体験を映画化したようにも見えるのですが、それは映像的比喩として、であって、本当は、という手法、結構自分好みなのかも知れません。


今作はスピリチュアルな、夢的な、幻想的なシーンは無いのですが(一か所あるにはあるんですけれど多分現実)、それでもなお、今作も、非常に重い、ヘヴィーな作品。ある意味また『魂』を描いた作品です。


オスカー・アイザックは私はポー・ダメロンでしか見た事が無いのですが、イイ役者さんですね!渋い上に、何を考えているのかワカラナイけれど、相当な何かを乗り越え、心的傷を抱えた男、に凄く見えます。


今作の主役ウィリアムの心の傷、トラウマ、は相当に根深い事を表すのに、部屋の装飾、があります。何でこんな事考え付くのか?本当に謎ですけれど、相当な 何か を感じさせるに十分です・・・


ポーカーゲームを生活の糧にしている、ほぼ隠遁生活を送るウィリアムにとって、モーテルが生活の場なのですが、そこに、ある装飾をしない限り、心の平穏が保てない、というように見えるのです、言葉では一切説明されないけれど、ちゃんと理解出来るのです。


そして「魂のゆくえ」のイーサン・ホーク同様に、オスカー・アイザックも、また、日記を書いています。なんだか凄く、類似性を感じるキャラクターです。


現実と折り合いを付けながら、心の傷を庇いつつ、しかし突き放した世界を孤独に生きている男の、哀愁というか、そうとしか生きていられない男、の刹那を感じさせてくれて、非常に好感持ちました。


この映画について、ずっと考えてしまう映画。


不穏感を音楽でも感じさせてくれると言う意味なら、今年の暫定ベスト「オオカミの家」もそうなのですが、今作は生々しさ、という意味で一ひねり感じました。それに劇伴も凄く良かったです、久しぶりにロックを聞きたくなりました。


多分誰かと話していても合意や同意を得られないのだけれど、簡単に言葉に出来ない共感を呼ぶ個人的に忘れられない映画。


俳優さんはどなたも素晴らしく、きっかけを作る相棒にタイ・シェリダンが居るのですが、もうちょっと若い頃のアダム・ドライバーに見えなくもないです、それくらい良かった。


さらに、本当にチョイ役なのに引き受けて全力で演じきったウィリアム・デフォーが、もう何と言いますか、この人じゃなきゃ出来なかったキャラクターで、しかもリアリティを感じさせてくれます。


ウィリアム・デフォーに、「すべての行動は自己責任だ」と言い切られると、本当に恐ろしくなります・・・


トラヴィス・ビックルが好きな方に、オススメ致します。あるいは、何かを待って生活している人に。