雑記猫

LAMB/ラムの雑記猫のレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.1
 飼っていた羊が産み落とした半人半獣の子供を、自分たちの子として育て始める羊飼いの夫婦の奇妙な生活を描いた作品。


 禁忌に触れてしまった人間たちの顛末を民話的なストーリーで描いており、テーマやメインの物語は悪くない。しかし、約1時間半の尺に対して、どうにも内容が薄く、オチまで含めてこちらの想像を超える展開も起こらないために、あまり盛り上がることなく終わってしまっている印象だ。話運びに関しても、羊から生まれた子供”アダ”の首から下が人の体をしていることや、主人公の夫婦がかつて子供を亡くしていることなど、物語上の重要な情報があまり意味もなく長く伏せられたまま話が進行していくために、主人公たちの心情の機微が無闇に掴みづらくなっていて良くない。また、演出面で言うと、半人半獣の子”アダ”しかり、主人公夫婦に飼われている羊たちしかり、出てくる動物たちがなんとなく画面に可愛らしく映ってしまっているのも、作品の雰囲気を削いでいるように思えてならない。特にアダは可愛らしさと生理的な気持ち悪さが同居していないと作品の雰囲気が締まらないはずなのだが、CG合成が自然すぎるがゆえに逆に違和感が減少して可愛らしさが勝ってしまっており、もったいない。


 一方で、主人公たちの住むアイスランド山間部の寒々しい空気感や、主人公夫婦の間に漂う空虚さを象徴するような白夜の光景などの風景描写は実に良いし、主人公たちの羊飼いとしての日々の仕事の風景の切り取り方も優れている。このように作品の雰囲気作りという点では、見るべき点は多い作品であると言える。また、本作は、上述のとおり、出てくる動物やクリーチャーたちの雰囲気が、ホラー映画にも関わらず一様に妙に可愛いのであるが、それは逆に言えば、動物の魅力を引き出すのが上手いということでもあろうと思われる。非常に逆説的になってしまうのだが、正直、本作がホラーでなければ良かったのにと思ってしまう。
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