genarowlands

ヴァル・キルマー/映画に⼈⽣を捧げた男のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

3.8
「トップガン」で印象に残ったアイスマン。その後、「ヒート」で再会したヴァル・キルマー。他に作品を観たわけでもないのに、気になる存在だった。ドキュメンタリーが作られていたので、軽い気持ちで観たら、アイスマンは病で声を失っていた。舞台役者から始まり、声を失うまで自作の作品を舞台で演じ、また声が出なくても演じる道を探っている。アイスマンは熱い。

ジュリアードの演劇科に当時最年少で入学した秀才。子供の頃から映画が好きで、日記のようにいつもカメラを回している。今でも回し続けている。この作品は映し続けた人生を映像コラージュのように編集した自撮りドキュメンタリーの第1章。

カメラを見る目は才能に溢れた早世した弟の目線なのだろう。若きアーティストの弟が描いた絵コンテ、撮ったフィルムに、十代の二人の少年の映画への情熱が溢れていた。

ドキュメンタリーなので、説明はないが、
カルト的宗教を信仰していた両親が適切な医療を受けさせなかったために事故で弟が亡くなったことが少しずつわかってくる。

チェロキーのルーツをもつ土地にこだわりをもつ事業家の父親と葛藤があったことは容易に想像できる。それでも、さまざまな宗教を学んでいて、父親を理解し、超え、赦そうとしているようにみえた。

すごく知的で抑制されている一方、ユーモアがある。少し気難しい苦労人にもみえる。本来は舞台で演じたかったようだ。映画だと、弟が監督だったらどうするか、弟と一体になってしまっているようにもみえる。弟が監督で自分が演じるパラレルワールドに生きているようにもみえた。

声を失っても演じる道を模索している。真摯に生きるヴァル・キルマー、アイスマンのように力強い人だ。今を生きようとしているのに、邦題が過去形なのが気に入らない。
genarowlands

genarowlands