菩薩

スープとイデオロギーの菩薩のレビュー・感想・評価

スープとイデオロギー(2021年製作の映画)
3.9
非常に良かったし丁度『FLEE』の上映も始まったタイミングってのはドンピシャなのでは、是非二本立てとは言わずとも両方観ていただきたい。『FLEE』は匿名性を守る為の手段としてアニメーションを活用していたが、こちらは実の娘が実の母にカメラを向ける心の内を明かしていく。どちらも自分の故郷に起きた悲劇について、そしてその悲劇が元で故郷を飛び出した者の肖像。後半以降はアルツハイマーが進行していく母との対話になっていくが、限られた時間の中で、本人は忘れた方が幸福に決まっている記憶をわざわざ掘り起こしていかねばならない苦悩は観ているこちらも結構しんどい。これを観てヤン・ヨンヒはやはり正義の人だなと思った、こうやって受け継いだバトンをこの後どう次の世代へと繋げていくのか。亡き母との約束だと言うある済州4・3事件の劇映画化もいつか必ずしも成し遂げて欲しい、生半可なものは出して欲しくないが…。一個気になるのはやはり本作プロデューサーでもありヨンヒの夫でもある荒井氏の葬儀社に対するヤクザまがいの恫喝、って自分はあれは単なる演出だと思ってるんだけど、プロデューサー判断で普通ならカットにしそうなとこをわざわざ入れたって事は、家族になるってそう言う事だってアピールなのだと思う、だからと言ってまるで肯定は出来ないが。最後オモニは全てを忘れてとても穏やかな性格になったそう。最後に覚えている記憶が悲しく辛いものだったらそんな残酷な事はないと思ったから、だとしたら救いだったのかもしれない。
菩薩

菩薩