のんchan

スワンソングののんchanのレビュー・感想・評価

スワンソング(2021年製作の映画)
4.3
上映時に観逃してしまい後悔していた作品、やっぱり想像どおりに良かった〜✨🙌⭐️

実在したヘアメイクアップアーティスト、パトリック・ピッツェンバーガー(1943-2012)をモデルにしたハートフルドラマ。
トッド・スティーブンス監督が17歳時、オハイオ州のゲイクラブでゴージャスな衣装を身に付けて踊っているパットを見かけて衝撃を受け、その時から監督の女神だった人物🌟


老人ホームで介護士の言うことに反発しながらも、静かに余生を過ごしているパット(ウド・キアー)の下に弁護士が訪ねて来る。
パットの元顧客だった街で1番の金持ち女リタ(リンダ・エヴァンス)が亡くなり、遺言状に"死化粧をパットに頼みたい"とあるという。
だがパットは断わる❗️かつては大親友だったというパットとリタの関係だが、ある出来事から犬猿の仲となり関わりを絶っていたのだった...

それでも気を取り直し、葬儀場へ向かうことにするパット。そこまでの道中、彼氏の墓参り、住んでいた場所に立ち寄り、過去を知っている人やゲイの若者に出会って、過去を振り返り、また若者たちへ勇気を与えながら、リタを許し真摯に向き合うまでが、ロードムービー風に描かれている。

音楽がとても良い♬
メリッサ・マンチェスターの「哀しみは心に秘めて」をはじめ、ジュディ・ガーランド、シャーリー・バッシーなどの名曲が使われて、その歌詞がストーリーとパットの心情にシンクロしている💫


葬儀の話なのにジメジメせず、時折りコメディのように、そして華やかな衣装やメイクも楽しめる。
何と言ってもウド・キアーの成り切り具合がマッチしていて微笑ましく応援したくなる。
左手親指以外の9本の指全部に指輪💍を嵌め、メイク💄もして、花飾りの付いた帽子を被りオシャレするのも馴染んでいる✨キアーの内股加減も絶妙です😆

ちなみに監督もウド・キアーもゲイなんですね🏳️‍🌈




余談ですが、死化粧ってプロがササっと美しく仕上げてくださいますよね。
私ごとですが、98歳で大往生した母方の祖母は信じられないほどシワがなく、祖母の嫁入りの時は時代もあり、華やかな打掛けを着ていないと聞いていた母が、棺桶の中で全てを綿で仕上げる花嫁衣装仕立てにしてもらったんです。
凄く可愛らしい顔を忘れられません💖
『天国に嫁ぐから』と母と私は納得して葬りました。

他のユーザーの感想・評価

appleple

applepleの感想・評価

3.8
よかった、、。

人生の悲哀と喜びを見せてくれた。

音楽もいちいち素晴らしい。
訳詞を見ながらの鑑賞はこれまたぐっと来る。

サントラあるかな。
ゴージャスでエレガントでチャーミングなパット(ウド・キア)、最高。コミカルなのに切なく、切ないのに爽快。老いと死に向き合い、自分らしく生きようとするシニアにたくさんの勇気をもらいました。

その町で最もイカしたヘアメイクアーティストだったゲイのパット。数多くの顧客を持っていた。今は老人病院で退屈な日々を送っている。かつての親友で街の資産家のリタの死化粧を頼まれたが絶交したわだかまりから気が進まない。

誰にもやってくる死と老い。静かに「その日」がくるのを待つことこそ老いなのだと、「その日」まで自分らしくあろうと、かつての華やかで絶好調だった自分を記憶の底から掘り起こしていくパット。封印していた辛い思い出も一緒に出てくるが、最高の自分を自分への餞にするには、過去に向き合わないとならない。

舞台の町のほどよい小ささや田舎感がたまらなくリアルで切なく感じた。不良老人パットは出会ったゲイの若者の美しさを引き出し自信を与え、この町から飛び立てと励ましていく。

「スワンソング」アーティストが遺す最期の最高のアート。

実在の人物でした。

美意識が人の気持ちを若返らせていくのわかる~気をつけなきゃ、我が身振り返りました😅

パット最高。大好き。美意識は人生の喜びで生きる力ですね。
ゆみな

ゆみなの感想・評価

3.5
ロードムービー。ウド・キアがもっと好きになる。ラストとっても良かった。
ジジイ

ジジイの感想・評価

3.6
記録。タイトルは「芸術家が亡くなる直前の最高の仕事」の意。監督によればこの作品は「失われゆくゲイカルチャーへのラブソング」であり、その通りだと思った。ウドキアが伝説のヘアドレッサー(実在)に完璧になりきっていて驚く。いい話なのだけれど作り手の思い入れが強すぎるのか、ややテンポが悪く退屈な時間帯もあった。古着屋の女性店員とのエピソードが何気によかった。
同年に公開されたAppleTV+の方の“スワン・ソング”もかなりいい映画だったが、どちらもスワンソングーー「最期の作品」と言う大前提を忘れてはいない。
実話ではないが、実在人物に着想を得た作品であるらしい。

主演は百戦錬磨の名優ウド・キア。
そこにいるだけで作品としての重みを一段階引き上げるレベルの役者であると思う。
最初からどう見たって病状は芳しくないのに、老人ホームにいる時点で煙草はスパスパ吸いまくるわ、勝手に徒歩で出てってやりたい放題だが、過去の名声を知ってる人は知っている。そんな人。

道中はキア演じるパットの栄光があった(そして本作時間軸では巧妙に隠されてる)過去を辿るものにもなっており、冒頭に語られた「本物のカリスマ」としての説得力に満ちている。
そして、たびたびパットが死者を近くに感じる(時に語らうことさえある)のは、どんどん死を身近に感じているからだろう(分かりやすいがそれゆえ刺さる演出)。

カリスマはスワンソングを残して去る……とてもきれいで眩しい映画でした。
えりこ

えりこの感想・評価

4.0
主演がウド・キアの時点でかなり当たりではないかと予想したら、やはり…でした。
この方の立ち振る舞いを見ているだけで痺れます。
彼に刻まれた年輪が、物語全体に深みを与えていて。旅の途中で登場する人々とのエピソードも好き。
ウド・キア、高齢だけどまだまだお元気で頑張って欲しいです。
emi

emiの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

老人ホームで暮らすパット、彼はかつて成功をおさめたヘアドレッサーだった。
しかし今では手慰みに紙ナプキンを折り、隠し持った煙草を吸っては介護士に叱られる日々を送っている。
そんなパットの元に弁護士が現れ、かつての親友リタの死を告げる。そしてリタの遺言には死化粧はパットにと書かれているとも。
「無様な髪のまま葬ればいい」と言い放ち弁護士を追い返すパットだったが、やがて煙草と僅かなお金、そして小さな箱を持ち着の身着のまま老人ホームを抜け出すのだった。

彼の過去の栄光、そして彼に無様な髪のまま葬れとまで言わせたリタとの確執、そして彼のパートナーであるデビッドとは?
リタの葬儀場に向かう旅路で徐々にパットという人物とその人生が詳らかになっていくロードムービー。


スワンソングとは死ぬ間際の白鳥は最も美しい声で歌うという説に由来する、芸術家が人生最後に残す最高の作品を意味する。タイトルからこれがパット最後の仕事であることは想像できた。

かつて成功を収めた彼がどうして施設に入り生活保護を受けるに至ったのか、最初から最後までこの映画を観ても映像で詳しく描写はされないので、台詞から想像で補完せざるを得ない部分はある。(というより、多分そこに重きは置いていない)

しかし現在と過去、現実と空想を行き来しながら描く浮遊感がある作品ながら、不思議な説得力がある。
それは映像の魅せ方であったり、主演ウド・キアの怪演であったり、素晴らしい要素が散りばめられていたからのように思う。

映像もどこかレトロかと思えばビビッドなシーンもありメリハリがある。
序盤のパットはグレーのスウェットに白いTシャツとモノクロな出立ちなのだが、物語が進むと共にカラフルな…おそらく本来のパットの姿を取り戻していく。彼が自信を取り戻し、過去や自分と向き合う過程と映像や衣装の彩度が連動して描かれていくのはとても良い演出だった。

クィアのカルチャーを表現することにも力を入れているのは、監督自身がゲイであることと、監督本人が憧れ衝撃を受けたパットのモデル。ゲイのヘアドレッサー、パトリック・ピッツェンバーガーを正確に描きたかったからなのではないかと思う。

監督はインタビューの中でオハイオ州のゲイバーで踊る彼を見たと話しており、目立たず馴染む服を着る事が暗黙の了解のような町で、彼だけは違ったと語っている。その時の印象を強く反映させたのが、この表現手法なのかもしれない。

主演のウド・キア、長いキャリアを持ちながらもアメリカ映画で主演する機会は少なかったらしい。若い頃もB級ホラーの出演が多い(こちらでは主演もしているようなのだが、アメリカ英語ではない模様)
過去に出演している作品は何本か観ていたが、失礼ながらあまり印象には残っていなかった。

それがこの作品ですっかりファンになった。彼が本物のクィアなのではと思うほど、一挙手一投足がパットなのだ。(って、後から調べたらゲイだったわ!堂に入ってるわけだわ)
パットが時折見せるプロの表情はとんでもなくかっこよくて、冒頭の施設内で老女の髪に優しく触れ、煙草を燻らせながら魔法のようにセットしていく様子は彼が口でなんと言っていても衰えない技術を物語っている。正に神の手!という感じで素晴らしいシーン。

物語中盤、被服店の店主スーと会話するシーンが1番好きだ。
入店した直後のパットは彼女を覚えていない。でも彼女は一度だけ彼の店に行った事があるという。
もう自分のことなど誰も覚えてはいない、そう思っていたパットは自分に気づいたスーに驚くけれど、スーにとってはたった一度の大切な体験。ずっとあの日を思い出にしていて、パットの仕事を何十年も覚えていた。
パットが徐にスーの名前を口にして、勧めたヘアセットやその日の会話の内容、教えてくれた息子の名前までも思い出す。年をとってもスーのことを覚えていたパット。カリスマだっただけでなくお客ひとりひとりを大切にして、仕事に真摯に取り組んでいたであろうことが垣間見えるシーン。

ディーディーにかけた「顧客が求めるのは技術であって、店の豪華さじゃない」という言葉は彼のプロ意識の表れ。実際そうだと思うのに、ディーディーは成功し、自分は落ちぶれてしまった…。だから余計に信じていたものに裏切られた気持ちが強くなったのだろうし、自分を裏切るかのようにディーディーの店に乗り換えたリタも許せなかったのかなぁ。

リタはパットとの(空想上の)再会で、デビッドの葬儀に行かなかったことについて、彼と直接の面識はなかった、葬儀が苦手だったと言い訳を並べていたけれど、おそらく本音はデビッドの死因であるエイズが怖かったのだろう。
この時代HIVの理解は現在と違っていたはずだし、感染リスクについての理解も今ほどなかった…と、考えれば無理もない気もします。デビッドのパートナーであるパットからすれば、その真実を知っても許せない所はあるかもしれないけど。

それでもリタは自分の孫がクィアだと知って、自分の親友パットのことを語り聞かせたというから、その友情は本物だったんじゃないかな。
棺に仕事道具の鋏を入れたパット、彼の仕事はこれで終わりなんだ…感慨深いシーンでしたが、まさかラストはその後だったなんて。パットもまたHIVだったのかな…でも冒頭で心臓の発作がって言っていたし、度重なる鼻血はそのせいか。うーむ。

こういう部分も含め"あの頃のゲイカルチャー"を大切に表情しているのかもしれません。明るい部分ばかりではない、あの頃があるから今があるのだと…監督のリスペクト故なのかも。半ば想像だけどね。

話が進むにつれて過去の人物との対話が増えていくのは、彼自身そちらに誘われていたからなのか。不思議な構成に思えるけれど、そう考えれば腑に落ちる。

挿入歌の歌詞を登場人物の心情とリンクさせる手法は多く、同じくクィアに関連する作品『ステージ・マザー』でも行われていたけれど、スワンソングではエンディングにも拘っていて良かったですね。パットらしく去っていくのも良かった。

シナリオのテーマとしてはありがちではあるのだけど、本作にしかない魅力が随所にある。個人的にとても好きな作品でした。

ウド・キア、今作で主演の面白さに目覚めたとのこと。積極的にオファー受けたいとインタビューで答えていたから楽しみ。是非もっと主演作品見せてほしい!
スウェット姿からこれはただ者じゃないオーラ全開のウドキア。

かつての親友から死化粧の依頼
ヘアメイクアーティスト
ゲイカルチャー

Dr.フランクを思い出すミントカラーのジャケット衣装
#サスペリア
#悪魔のはらわた
いち麦

いち麦の感想・評価

4.0
親しかった顧客リタの死化粧を依頼されてから、ヘアドレッサーだった彼がもう一度自分の生きた喜びとその証しを確認していく物語。リタの死化粧だけではなく、この小さな冒険旅行のような行動全体がパットの“スワンソング(芸術家最後の作品)”になっていると感じた。ロードムービーの色は薄いが味わいのあるドラマで、様々な人との触れ合いが優しく心を和ませてくれる。パートナーが死んでからの彼の人生が如何に悲惨であったか、死んだリタとの経緯や彼女の人生と心の成熟もよく伝わってきた。ウド・キアの自然な演技、目の覚めるような彼の衣装一点が美しくとても印象深い。
leyla

leylaの感想・評価

3.9
スワンソング=人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すこと。

自らもゲイである監督が、17歳の時に地元のゲイクラブで見たヘアメイクドレッサーのミスター・パットに衝撃を受け、作品にしたもの。急速に消えていくアメリカのゲイ文化へのラブソングだそう。監督の想いと情熱が伝わる作品でした。

今は老人ホームにいるミスター・パットに、かつての顧客でもあったリタの死化粧をして欲しいという依頼が舞い込む。
何十年ぶりかで故郷に戻り、過去の栄光や思い出、恋人の死などがフラッシュバックしながら、過去を精算し、パットが再び輝きだしていく…

ウド・キアの演技と魅力に満点を。
ゲイの話だけにとどまらず、老いてなお自分らしくどう生きるか、アイデンティティや死にざまについてなどを考えさせられ、観終わって余韻が残りました。

OPとEDにセンスを感じるし、サウンドがとてもいい♪素敵な作品です。
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