MasaichiYaguchi

笑いのカイブツのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.9
「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキさんの同名私小説を原作に、笑いにとり憑かれた男の純粋で激烈な半生を、岡山天音さん主演で滝本憲吾監督が長編商業映画デビュー作で、青春の葛藤や苦悩を交えて描く。
不器用で人間関係も不得意なツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿することが生きがいだった。
毎日気が狂うほどにネタを考え続けて6年が経った頃、遂に実力を認められてお笑い劇場の作家見習いになるが、笑いを追求するあまり非常識な行動をとるツチヤは周囲に理解されずに弾かれてしまう。
失望する彼を救ったのは、或る芸人のラジオ番組だった。
番組にネタを投稿する「ハガキ職人」として注目を集めるようになったツチヤは、憧れの芸人から声を掛けられ上京することになるが、そこにも現実社会の壁が立ちはだかっていく。
笑いへの情熱や努力だけでは上手くいかない現実の中で傷だらけになりながら、自分の道を猛進するツチヤタカユキの姿が見ていて胸が痛い。
主人公までに極端ではないにしろ、何者かになろうとしてもがき、のたうち回ったことのある人なら、本作で描かれたものに心震えないではいられないと思う。