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笑いのカイブツのmarimoのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.0
※コンディションが良い時に鑑賞した方が良い
※翌日が仕事の日の夜に観ない方がいい
※共感は出来なくとも仕事の悩みや強迫観念を凝縮したものを浴びるので気持ちが滅入る
※「PERFECT DAYS」の真逆みたい作品

これは通称「伝説のハガキ職人」ツチヤタカユキから見た世界の話

私はツチヤタカユキがオードリーのANNに関わっていた頃はリアタイでは聞いておらず
あくまで大体の概要と遡っていくつか放送音源を聞いて知っている程度の知識です

オードリー若林がトークで語るツチヤタカユキは笑いの神様に選ばれた人物のように思えた

本作を鑑賞後
それはあくまでオードリー若林によってリスナーに最適化されたツチヤタカユキだったのだと

映画として笑いに人生を捧げた人間の話を描いてはいるが作品として”笑い”の要素は全くない

あえて笑いを排除した演出なのかは知らないが映画としての面白さが全くなく淡々と辛い瞬間が続いていく

劇中では人生の節目のタイミングで
大喜利のお題と答えが映される
人生を捧げて得られるものとしては見合わなくて辛い

鑑賞後にパンフレットを読んで知ったのだが
この大喜利テロップのお題と答え、劇中のベーコンズ(オードリー)のライブシーンのネタは
今のツチヤタカユキに書いてもらったそうだ

過去のその時期のツチヤタカユキの”笑い”こそ見たいと思ったが
もしかしたら当時のネタはそのまま使えない大人の事情もあったのかもしれない

「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇」

それは、本作における痛々しいツチヤタカユキの姿と
ANNで若林に語られていたツチヤタカユキの姿

人と関わることが不得意でも
笑いは人と関わらないと出来ない

どれだけネタが優れていても
それを最高の形で発信できる語り手の力が無いと成立しない

ツチヤタカユキが人を信じて共に歩むことが出来た時に生み出される”笑い”を見てみたいが
それは彼にとってはあまりに辛く苦しい事

岡山天音、菅田将暉など俳優陣の演技力は素晴らしいが
映画としては相当人を選ぶ作品だと思います
上映時間以上に体感時間が長い作品で鑑賞後には嫌な疲労感が残ります

正直エンタメとしては全然面白くない
彼の苦痛を追体験させる目的なのであればそれは達成している

ツチヤタカユキの経歴を最低限知らないと、社会に適応できない人物の苦悩を救いのないまま見るだけの作品になってしまう

”笑い”を通して人と繋がってしまったが故の悲劇
人と繋がる術が瞬間的に消化される”笑い”だった事が無間地獄
”笑のカイブツ”に再度身を捧げた彼は結局はただ人と繋がりたいだけなのかもしれない
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▼劇場
 チネチッタ
 CINE1
▼作品名
 笑いのカイブツ
▼日時
 2024/1/7(日)
 20:30~22:30
▼座席番号
 E-11
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