SANKOU

THE FIRST SLAM DUNKのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

原作漫画は体格と身体能力には恵まれているものの、バスケはまったくの素人の桜木花道が、地道な努力を積み重ね、仲間に認められチームに欠かせない要となっていくまでの成長を描いた物語だった。
そしてこの映画の舞台となる山王戦は、原作ではクライマックスに当たる。
最初はどうしてもそこに至るまでの過程が省かれてしまうため、原作を良く知るファンのためだけの作品になってしまうのではないかと思った。
が、主人公の視点を宮城リョータに変えることで、この映画は原作未読の観客にも楽しめる作品になったのではないだろうか。
かつて原作者の井上雄彦が、才能だけが勝ち上がれる世界は描きたくなかったという内容の言葉を記していたことを思い出した。
流川も三井も赤木も、そして桜木も天性の才能を持っている。
しかし宮城だけは違う。彼は体格には恵まれていないし、飛び抜けた武器があるわけでもない。
原作では描かれなかった宮城の過去にとても心を打たれた。
天才と称された兄は若くして事故死してしまう。そして宮城は偉大な兄と比べられながら、兄とは違うんだと蔑まれながら屈辱に耐えて、それでもバスケから逃げずに生きてきた。
試合のシーンの流れを中断させてしまうことを承知でも、回想シーンを増やしたのはとても効果的だと思った。
観客はどんどん湘北メンバーに感情移入していく。
主役ではなくなっても、やはり桜木の存在感は抜群だ。
やや流川の個性は引っ込んで見えたように感じたが。
そして原作を知るファンの目線からしても、やはりクライマックスに向けての流れは胸が熱くなる。
個人的には今回のこの映画を観て、改めて試合の最後が派手なダンクではなく、桜木のジャンプシュートで決まることに納得した。
それは彼が合宿で地道に放ち続けたシュートだ。
これこそ才能ではなく努力が実を結ぶのだということを象徴したシーンだ。
試合終了後に湘北選手が雪崩れ込む中、最後は宮城の目線に焦点が当たるのもとても胸が熱くなった。
個人的には新しい声優陣にはまったく違和感を抱かなかったし、今だから描ける井上雄彦の『スラムダンク』を観ることが出来て感動した。
ファーストとタイトルにあるが、もしこの続編が作られるならファンにとってはこれほど喜ばしいことはないのだが。
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