まや

パリ、テキサス 2K レストア版のまやのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

オールナイト上映にて。3本目。
人とのつながりを結ぶことの難しさや、家族を持つこと、子供を育てることなどを考えさせられる作品だった。

主人公はメキシコを彷徨っていたが、倒れてしまい医者に助けられる。弟が迎えにきてくれるが、一言も喋らないし、勝手に何処かへ行ってしまおうとする。困惑する弟だが、なんとか家へと連れ帰る。主人公には子供がいたが、その子は弟家族の元で生活していた。久し振りの再会に戸惑うが...。

前半は弟家族との関係や子供との久しぶりの再会、また主人公の置かれている状況等が描かれていく。ここでの子供を迎えに行って、主人公と子供が通りを挟んで一緒に歩いて帰るシーンがとても好きだったし、徐々に心が通じていくことに心打たれた。

後半は主人公と子供が母親を探しにいく展開になる。主人公は突然弟家族に何も言わず出ていくし、子供ものことも何も伝えず、子供自身にそれを伝えさせられることにはすごいモヤモヤしたし、その後、弟家族については詳しくは描かれないので気の毒に思った。

だが、遂に母親を探しだし、この2人の夫婦の間に何があったのかが描かれるシーンは涙が止まらなかった。

奥さん側からは主人公の顔は見えなくて、こちらからしか顔が見えない。どうにかしてお互いの顔を認識するが、それでも顔が重なってしまって自分を見ているだけになってしまい、ここがとてもうまいなと思った。お互いに相手のことよりも自分のことしか考えていない、自分しか見えていないというふうに見てとれた。

事実2人共が相手よりも自分を選んだ結果として今の現実が存在しているのだ。どちらかがどうにかしようとしてもそれって1人ではどうしようもなくて。お互いにの認識がないと家族としてはやっていけないのだなと強く思った。自分を押し付けず、相手を慮る。これを続けていくことってとても難しいし、逃げ出したくなるのもわかる。だが、子供がいたらそれは話ば別で、すごく親の顔を見ていて、どう行動すべきかという事を考えているからかどこか大人びてしまっていることに悲しさが強くなった。結末も結局自分を変えられないことを選んでいて、少し不安な気持ちになった。
ただ、色での統一で感情を表していたり、演出的な部分はとても上手く、美しい映像の数々は見入った。

また、当時の仲良かった際のホームビデオのシーンもここから思い起こすととても胸に残って切なくなるなと思った。

愛すること、というのは決して押し付けることではなく、受け入れること、寄り添うことなのだろうなと。しかも同じ方向を見てそれを一緒にやっていく。それはとても難しいことだなと強く思った。
まや

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