通りすがりのいがぐり

アステロイド・シティの通りすがりのいがぐりのネタバレレビュー・内容・結末

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

※今回の文には海外版及び日本版の予告編で伏せられていた内容に触れるためネタバレ注意しました。


ウェス・アンダーソン流創作との向き合い方指南

独特のテンポとカメラワーク。心地よい空間と独創的なカットの数々。そして魅力を存分に発揮させてる俳優陣。つまりいつものウェス・アンダーソン監督作品。そしていつものようにとてもとても楽しい映画体験。だけど今度はちょっと違う。コロナ禍は一旦の幕引きとなり描かれる自問自答にも思える創作と表現についてのお話というとてもパーソナルな映画なんです。

あらゆる理由で泊まる事となった人物たちを中心に描かれる一夏のUFO騒ぎで描かれる喪失と前進との付き合い方。を描くある劇についてのお話。一定のリズムを崩さず常に落ち着きながら展開されるのはいつも通り。だが、今作はとても内面的な面に焦点を当てながら進行していく。話を創るとはどういうことか?演じるとは何か?道に迷った気分だどうしよう?そんな不安に"大丈夫、この気持ちを抱けばきっと道は見つかる"と優しく答えてくれる。"作家は自身の作品に想いを込めて発信する"とか"作家が自身の作品の中で自問自答をする"という、よくあるかもしれない創作物を一つにまとめたのが今作に抱いた印象だった。悩み閃きまた悩み立ち止まり進んで悩みまた閃きゆっくり進んでやっとのことで結論を導き出す。そんな小説的な作風なので前作のフレンチディスパッチよりかは好みが分かれる作品であるのも納得できる。しかしだ。個人的にこっちの方がとてもズシンと響いた。

孤独な葛藤の中で間違いなく光った一筋の答えを力強く発信したこの映画には、創作者たちへの応援歌となっているからだ。この映画にはウェス、アンダーソンによる変わらぬ魔法が掛かってて、大なり小なり創作者たちへの応援が詰まっている勇気を与える魔法なのかもしれない。だからすごく気に入ったのだ。