作り込まれた画面かもしれないけど、外ではしっかり風が吹いている。カフェで休んでいるシーンでも、外にあるひさしが揺れていたり、木々も揺れ動いている。意味のわからん子供が屋根から飛び降りたり、原爆実験で振動が伝わってくる。劇のシーンなのに本当の振動が間違いなくある世界。だから、全員が同じ方向を見る（目撃する）ことに感動する。劇を作っているのにあまりに劇っぽくない（いつものウェスアンダーソンっぽい世界/突然の暴力とまるで調子外れのカーチェイス銃撃戦）ところ、その舞台裏が垣間見えるおかしさ。だから、亡き妻とのベランダ越しの会話がグッとくる。嘘を嘘ものともしないよさがある。ここまでくると狂人の映画だと思う。ここ最近で最高のウェス・アンダーソン。
