柏エシディシ

ドーナツキングの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ドーナツキング(2020年製作の映画)
3.0
ポルポトの圧政を命からがら逃れて、たどり着いた遠い異国アメリカ。
そこでドーナツ店経営で大成功を収め「ドーナツキング」とまで呼ばれたカンボジア移民テッド・ノイの奇妙で可笑しく、やがて哀しき物語
成功を収めたテッドの転落はなんともステレオタイプで哀しいが、彼の暗黒面もチャームになる様な作品全体の陽性のトーン、ドーナツという食べ物のファニーさ、その軽快さとは裏腹に刺激的で豊かなドキュメンタリーだ

アメリカ文化を象徴する様なドーナツが、縁もゆかりもなかったアジアの国からの移民たちの生活の基盤になっていき、もはや自分達のアイデンティティになっている諧謔性
でも、カルチャーなんてそんなものだし、そうやって広がったり変化していくもの
アメリカの精神とは本来そういうったものでしょう?と、おそらく製作当時トランプ政権下の中、極右に傾いていっていたアメリカへの自身も中国系移民2世の監督のメッセージを感じる。

さて、アメリカほど表面化はせずとも劣らず保守的で閉鎖的な私たちの国はどうだろうか…苦難の中「平和な国」日本を新天地に選びはるばるやってきてくれた未来の同胞たちを受け入れ、共存する度量や可能性はどれぐらいあるだろうか……ちゃんと考えなきゃ、ね
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