周りの人が全く見ていなくて寂しい。これは結構な掘り出し物でしたよ。無垢×悪意のストッパーの効かなさは、不気味なのに直視したくなる。それは私が映画を見たくなる行動原理と同じなのです。
『童夢』は20年位前に1度読んだきりなので細かい比較はできないけど、今作は真逆のテイストに感じた。いうなれば童夢をセリーヌ・シアマの『トムボーイ』っぽくアダプトさせた感じ。質実剛健。同じストーリーラインに、全く異なる美意識が乗っていておもしろい。
北欧独特の湿っぽく閉鎖的な空気感の中で、ギリギリありそうなレベルの超能力が目覚めていく。派手なバトルシーンはほぼ無い。バケーション時期のため団地から人の気配が消え失せていて(つまり残っている子供たちには休暇に出かけられない何らかの事情がある)風景にも雰囲気があっていい。
大人からみた子供たちの超能力の得体の知れなさは、反転して、子供が世界を知った時に感じる恐怖と共鳴するんだなと思った。
子役は全員抜群にうまく、特に悪性を一手に引き受けるベン役の男の子が素晴らしい。北欧の柳楽優弥と名付けたい。涙を流しながら大切なものを殺める演技がリアルすぎてぞっとした。