当時、東京国際映画祭で鑑賞した。佐藤泰志の原作小説は既読済み。
オムニバス形式で進む重厚なドラマ。大阪芸大で鍛えた熊切和嘉監督だけはあり、律儀な作りには好感が持てる。
ただ、その律儀さ(或いは職人気質)が却って映画を堅苦しくさせている気配も伺わせる。
群像劇としてPTAの『マグノリア』やアルトマンの『ショート・カッツ』ほど映画的躍動感がなく弾けないのは、構成や配役に頼りすぎているからだろう。全体的に散漫。
そもそも佐藤泰志の原作小説自体が大して面白くないので、これを映画化するのはなかなか難しい作業だったのでは?と思う。総じて「よく出来た宿題」の域を出ない。
近藤龍人の撮影、ジム・オルークの音楽は良いとして、この手のインディーズ映画にありがちな自意識過剰ぶりはちょっとキツいものがある。
演出に於ける熱量、力量はとんでもないモノがあるので敢えてこのスコア。第一話に出て来る竹原ピストルが魅力的な男を快演。谷村美月も可愛い。やくざな風貌の加瀬亮も高圧的で怖く圧倒的なインパクトを放っている。