弓太郎

パラレル・マザーズの弓太郎のレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
3.9
終盤になって子供の取り違えの話からスペイン内戦の話にシフトしたのでやや混乱したが、エンディングで引用されていた「声なき歴史などない。焼き尽くし、破壊し、偽ろうとも人の歴史は口を閉ざすことを拒む」という言葉でやっと趣旨が理解できた。
要は、これまで育ててきた子供が取り違えた子だったこと、そして本当の自分の子供は突然死してしまっていたことが受け入れられず、忘れ去ってしまいたいと葛藤しているジャニス(ペネロペ・クルス)が、その一方で、スペイン内戦で亡くなった自分の先祖の過去を葬らせまいと奮闘する、という倒錯を描きたかったのだと思う。そしてこの自己矛盾から、最終的には実の母親に真実を告白し、最愛の子供(血は繋がっていないが)を手放すという重い決断をしたということなのだろう。
この映画の舞台であるスペインのみならず、どこの国においても都合の悪い歴史を葬り去ろうとする動きは常にあって、だからこそ私たち一人ひとりが過去と向き合い、声をあげ続けていかなければいけないなぁと身に染みました。簡単なことではないのだけれど。すごくいいテーマを扱った作品だと思うけど、いかんせん回りくどくて分かりづらいのが勿体無い。
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