映画館はいいよなぁ。
いろんなドラマがあって。
映画に合わせて僕らにも舞台を作ってくれる。
右には上映前から
べちゃくちゃうるせえカップル。
左には上映中寝息立てながら
爆睡する女の子2人。
"どちらも制服を着た高校生"
ああ、僕が阿部サダヲだったらな。
阿部サダヲだったら
目を真っ黒にして笑みを浮かべるだろうな。
上映後、両脇からの会話が
自然と聴こえてくる。
「難しくね??」
「私頭悪いから分からなかった〜」
「頭いい人だったら理解できるんだろうね!
いいなぁ〜!」
僕は目にハイライトを取り戻す。
阿部サダヲになった気持ちで晴れやかに思う。
「殺す価値ないな」
"項目"に当てはまらない
普通の人間に囲まれて
阿部サダヲになれない普通の僕は
満足げに映画館を立ち去った。