シネマウォーカー

フタリノセカイのシネマウォーカーのレビュー・感想・評価

フタリノセカイ(2021年製作の映画)
3.9
 LGBTを扱ったラブストーリー。かなり青くさい2人ですが、逆に2人の境遇を忘れてしまうような、カップルあるあるも見られて良かったです。ただ、作品のリアリティラインがよくわからなくなりました。

 舞台挨拶込みの上映会で監督と主演の俳優2人の話が聞けた事は良かったです。舞台挨拶だけ見にきてる人もいました。残念ながら、上映中に入ってくる人が多々いました。しかもスマホのライトを照らしながら入ってきたので映画ではなく俳優を見たいだけなのかと。舞台挨拶目当てなら、上映終了後の隙間に入って欲しいです。良い気持ちはしませんでした。

○ストーリー
 ユイ(片山友希)と真也(坂東龍汰)は出会ってすぐに恋に落ちた。同棲している2人はセックスをした事がない。そんなある日、ユイは真也がトランスジェンダーだと知る。壁にぶつかりながらも2人は周囲の人と関わりながら、“フタリノセカイ”を作っていく。

○良かった点
・テンポが良いです。密度も濃いので初見ですべて理解する事は難しいと思いました。
・真面目な内容だが、2人が変に大人になっていないのが良かったです。普通のカップルに見えました。意見がすれ違ったり、勢いで行動したりと、真也の設定が障壁に感じない時すらありました。
・2人が真剣に向き合っているところが特に良かったです。方向性を見出し、結論が出て、2人で悩み、受け止め、次へ進む過程が見どころです。

○気になった点
・リアリティラインがわからなくなる。田舎という設定だが、ユイが口にするまで、田舎と分からなかった。田舎の風景シーンがあった方が良かったのかなー。
・精子提供に関して、セックスする必要はあったのだろうか。医療的なアプローチもあっただろうに、その決断に至る過程は必要だったような気がします。
・置き去りになっている人が多かった気がします。真也の母親は一見理解があるように見えるが、ユイとのやり取りで深く考えてないとわかります。それ以降は真也と向き合う事はありません。
 結局、“フタリノセカイ”に踏み込めたのはLGBTのシュンペイだけでした。セカイが観客まで広がっていない気がします。これほど閉じたセカイで本当にいいのだろうか。

 色々と疑問が残りますが、観て損はしません。是非、劇場でご鑑賞ください。

【2022年ー9本目】