本作『さがす』はポン・ジュノ監督作品『母なる証明』や山下敦弘監督作品『マイ・バック・ページ』などで助監督を務めた片山慎三監督の長編2作目となってます。
『岬の兄妹』と同じく社会的弱者や貧困がひとつのテーマにもなっていて
劇中での連続殺人事件は日本中を震撼させたある事件を組み合わせたような設定で、『そこにいた男』にも通ずるサスペンスフルな作劇の中で逸脱していく日常やそれによって見えてくる人間性というテイストも本作品『さがす』では活かされている。
更には、時系列をイジることで映画としての面白さ、ないしミステリーという部分で核になる演出であり、それは片山慎三がタランティーノ好きというのも大きく反映しているように見える。
ある程度、観客を信じて説明的な回想になっていない時系列の使い方。
台詞で語るのではなく映像で語る。
この語りすぎない演出と観客に伝わりやすい演出のバランス感覚こそが片山慎三の目指すものなのでは？と思わされるほど本作『さがす』は研ぎ澄まされていたと感じた。
この演出力こそ、ポン・ジュノ監督へのリスペクトであり、助監督として培われたセンスなんだと思う。
同情や正義感、幸せや希望。
人間とは何か、生きるとは何か。
様々な感情が交錯する中で起こった殺人事件の真相。
それを察する娘の感情。
限られた予算と撮影期間で、日本で実際にあった事件を想起させる脚本を積み重ね、登場人物の思惑を張り巡らせて練られた高水準な映画だと思う。
