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さがすのSSDDのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.8
■概要
シングルファーザーの中年男性は仕事もままならない、ある日中学生の娘を残して懸賞金がかかった指名手配犯を見たんだと話行方不明になってしまう…。父親の行方を捜す娘は、父の名を使って働く男を見つける…。

■感想(ネタバレなし)
かなりドープな作品で不快度が高い作品になっているため、誰にでもおすすめできる作品ではない。
様々な国内の事件、大阪にある貧困街の格差、SNSの闇など社会風刺的内容も盛り込まれている…。
独特な間や、雰囲気からかなり闇深く描かれているがとにかくセリフが聞きとりづらいのと長いため自分には没入感が出るまで時間がかかった。
謎が深まる場面からいきなり引き込まれていったが、なかなか思いもしない展開の仕方に驚かされた…。
ネタバレしないため書けないが、脳裏に焼き付いてしまったシーンがリフレインするたびに背筋が凍る…。

どんなホラーよりもやはり人がやはり怖い…。
佐藤二郎さんの緊迫する演技と、わざと何かを隠しているのを見繕っている演技の変化が素晴らしいし、いずれのキャストも名演だった。















■感想(ネタバレあり)
・タイトルの意味
起承転結でさがすの意味が変わっていくため、タイトルがひらがななのは独特のセンス。

父親を捜していた(あったものがなくなったのをさがす)から、帰ってきた父親がなぜ居なくなったのか理由を探す(もともとないものをさがす)に変化する最後は驚きました。

ただ、中学生が一人で父親の真相を探るだろうか、また白日の元に晒すのかと言われたら正義感や善悪な概念がそもそも薄いように描写されてた娘からの行動としてはあまり納得感はない。

父が帰ってきても好奇心から真相を探るのは頑固さ、真っ直ぐさから理解はできるが、人に施されても礼も言えない、人の顔に泥を塗るような少女が警察に突き出すだろうか…どちらかと言えば突然消えた父に対する怒りからの復讐心があったとすれば納得はできるかな。
ただ、卓球場を取り戻した日常を手放すほどの怒りなのか、私には想像できない。

父のあの母を殺してあげなければいけないと思ったあの日を知らないのだから無理もないかもしれない。

・脳裏に焼き付いたシーン
脳裏に焼き付いたのは不髄になっている妻が自殺を図っているのを玄関の隙間から見て動けないでいる夫。
その後、自殺に失敗した時の妻の目…あの目は恐ろしかった…あの独特な間やシーンが頭から離れない…。

・モチーフになった事件
座間9人殺害事件(2017)、自殺サイト殺人事件(2005)、相模原障害者施設殺傷事件(2016)をモチーフにされているが、犯人のベースが自殺サイト殺人事件が色濃く描かれているため非常に不快指数の高い理解し難い人間像になっている…。

自殺サイト殺人事件の犯人は白いソックス、窒息、人の苦しむ姿、暴力の4つに欲情するという異常者で、男女構わず白いソックスに欲情するため学校で男子生徒に襲いかかって首を絞めて傷害事件として捕まったりとかなりの逮捕歴を持っていた。
殺したあとソックスを履かせるという異常行動は映画の中で作り上げたものではないこと自体も恐ろしい。

山内は本当に父親を信頼していたのだなと、最後に倒れたクーラーボックスに入っていたビールが物語っていたがサイコパスにはそんな信頼や友情という概念はないとは思うのだが、勧善懲悪として人に最後に裏切られたと思って死んでいくという表現になったのだろう。

・総評
この作品はどろどろと気持ちの悪い世界に引き込まれていくが、それぞれの人物の視点と過去から真相を探させられていく流れが素晴らしいかった。

最後の卓球は家族のつながりが消えていくのを表現していたと思うが、妻が死んだ時の潰れたピンポン玉のようではなく、球のないラリーという表現と聞こえるパトカーの音で想像の余地を残したのだろうか。

私の中では娘に父親は告発されたのだと思うが、物語は勧善懲悪でないとだめだろうか…他の終わり方の解釈で腑に落ちればと思ってしまった…。
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