日本の闇をエンタメにした人情味溢れるサスペンスノワールの大傑作。
大阪新世界の闇、介護の闇、自殺ほう助の闇、障がい者の闇、など日本の闇のオンパレなのに笑えて泣ける恐るべき傑作。
ポン・ジュノの助監督だった片山監督が韓国ノワールくらいの強度を持つ日本映画を爆誕させた。
徹底的に非人道的な話なのに主演の佐藤二朗と伊藤蒼の飄々とした掛け合いのおかげで大阪人情ものに見えるのが恐ろしく多面的な作品にしている。
老人が変態だったり、自殺志願者がクズかと思えば良い一面も見せたりなど、「岬の兄妹」と共通する片山節が隠し味として効いている。特に森田望智の演技が素晴らしい。
殺人鬼よりも日本か抱えた闇が、ここまで深く、そしてエンターテインメントになるという事実が1番恐ろしかった。
世界一平和な国の地獄。
日本で唯一暴動が起こった街、西成区を舞台にすることで浮き彫りになる手つかずの社会問題が胸に刺さる。
関西人だけに分かる撮影禁止区域もあるスラム地域での撮影がゾクゾクするリアリティーを味わわせてくれた。
何度も撮影で訪れたから分かるが、あの街は社会問題の宝庫なのだが未だに昭和の人情も残る日本の縮図である。
だからこそ、最後に見せる伊藤蒼達の涙が絶望の日本に残された最後の微かな人情だと思いたい。
本当にこんな深いエンターテインメント見れて幸せでした。