みょ

さがすのみょのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.8
邦画捨てたもんじゃない、って思える邦画がたまにあるけど今作もそれ。良かった。

エンタメとしての完成度は非常に高いと思った。

まず大阪府西成区っていう舞台が見慣れた日本の街の景色でありながら程よく少し現実離れしていて見飽きない。ホームレスや炊き出しなんかは多くの人が馴染みのない光景だと思う。

それからキャスティングも良かった。
佐藤二朗以外にこの役が務まるのかってほどのインパクト。本当に唯一無二な俳優だなぁ。
山内役の清水尋也からはただのサイコパスって訳ではなく、現代社会に苦しみ歪められた一人の青年といった印象を受けた。

作品に散りばめられた小さな違和感が伏線となり次々と回収されていくのはとても気持ちがいいが、ただのエンタメで終わらせないところも良かった。

予告編でも公言していたが、自分の価値観が問われる映画。死に対する価値観を考えさせられる。

死にたいと思う人は世の中に沢山いるんだろう。その人が死ぬ手助けをしてあげることは本当に悪いことなのかよく分からない。

精神医学では死にたいという感情自体が病気、という考え方をする。
でも彼らは生きていることに苦しんでる。彼らにとっちゃ生きること自体が病気のようなものかもしれない。

劇中に出てくるALSという疾患はかなり残酷な疾患。現在も有効な治療法は無く、診断されれば徐々に動かなくなる体と共に死を待つのみ。

安楽死が日本で認められる日は来るんだろうか。死にたい患者。介護に追われる家族。患者の家計を圧迫し、国の医療費もかさむ。
それでも認められないのは人権があるから?
死ぬことは人権じゃないのか?

とまぁこの辺にしておいて、
最後のピンポン玉の表現は秀逸でした。
みょ

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